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クリプトのトークンを知ることで明るい未来が見えてくる
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- ジャバ・ザ・ハットリ
2022 年のクリプトはどうなる?という予想記事で「これから 10 年から 5 年内に全ての toC ビジネスはトークンを使って顧客とのつながりを作るだろう」というコメントを読んで「おお!これは!」とビビっときた。
ただ「トークンって人によってイメージが違って、なんか概念自体がふわふわしてないか?」と思った。そこをハッキリさせる意味でブログを書いた。
これからトークンを使ってなにかを仕掛ける人も、トークンを買ってみようかな、とお考えの方にもかなり参考になる記事になったと思う。
All consumer-facing businesses will benefit from engaging their customers with a token – from Starbucks, Delta Airlines, Netflix, and Disney to small local companies like your barber, gym and corner bodega.
今後の 5 年から 10 年以内にスターバックスもデルタ航空もネットフリックスもディズニーも、さらに小さな商売している人達、あなたの街の散髪屋やジム、定食屋までトークンを使って顧客とつながるようになるだろう。
-Jeff Dorman, Arca
引用 The Future of Money: 20 Predictions
もくじ
コインとトークンの違い
クリプトの世界でコインとトークンは区別されている。
コインはそのプラットフォームがブロックチェーンの機能を持っていて、ネイティブコインとしての通貨を示す。ビットコインはもちろんイーサリアムのイーサー、Solana の Sol などがこれにあたる。それぞれ独自のブロックチェーンの機能を持っている。
トークンはそうしたブロックチェーン機能を自分では持たずに、どこかのプラットフォームを間借りして、通貨機能だけを持たせたもの。イーサリアムのプラットフォームなどを利用しているので、正当性確認などのブロックチェーン機能は全てイーサリアムに任せている。
これは自家用車とレンタカーの関係に似てる。
自家用車を買った人は自分で購入して持ってるから車が壊れたら修理するし、車検にも出す。
レンタカーを使う人は借りてるだけだから車検とかの手間は要らない。その代わりレンタル料を払うし、レンタカー屋のルールに従う必要がある。
なので、自家用車がコイン、レンタカーがトークンと言える。
トークンの種類
トークンには多くの種類があって、それらをカンタンに説明しようとして「お店のポイントみたいなもの」とか「小分けした株です」「ほぼ仮想通貨です」と言ったりしてるが、実際にはそれら全てを足した感じでもあり、それらのどれとも違う。とにかく説明がややこしいので種類をざっと見ることで掴めてくる。
トークンには以下の 6 種類がある。6 種類といっても勝手に誰かが分類して分けただけ。誰も「この 6 種類だけ」とは限定していない。
種類を見ていく目的はあくまでトークンの全体像を掴むため。
トークンの種類 |
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1. プラットフォームトークン |
2. セキュリティトークン |
3. トランザクショナルトークン |
4. ユーティリティトークン |
5. ガバナンストークン |
6. NFT |
プラットフォームトークン
分散型取引所のUniswapの UNI トークンがこれにあたる。つまり分散型取引所などの dApp があって、そこを利用するユーザーのために発行、流通させているトークン。
Uniswap は取引所でいろんな仮想通貨を別の仮想通貨に交換ができる。それが分散型で運用されているため、取り引きしたい人同士がスマートコントラクトを介して交換する。オートマチックに交換価格が決定されるので注文スピードが速い。分散型取引所を本気で説明すると、それだけで1記事が書けてしまうので、これぐらいにする。
そうして分散型取引所を運営するにあたって Uniswap としては流動性プール内にできるだけたくさんの通貨を預けてもらう必要がある。そこで預けてくれたユーザーへのお返しとして、その量に応じて UNI トークンが配られる。
トークン自体に換金性もあるし、Uniswap の重要事項を決定する際の投票に使うこともできる。Uniswap の将来性に賭けている人達は直接 UNI を買ったりもする。
セキュリティトークン
不動産や株などの資産を持っていることを証明するトークン。「セキュリティ」はハッカーやらの攻撃からシステムを守る方の言葉ではない。英語で「証券」とかに訳される方の「セキュリティ」。
なぜセキュリティトークンなんて必要なのかは、金などを考えてみれば分かりやすい。
例えばあなたが投資目的で金を買ったとしてもマンガに出てくるみたいな金の延べ棒を家に置いたりはきっとやらない。その代わりに「金を保持してますよ」という証明を持つことになる。別に実際に金が家になくても、金の証明さえあればいいのだから。これと同じ発想がセキュリティトークン。
BTCB – Bitcoin on Binance Smart Chain がこれに当たる。
世界最大の仮想通貨取引所のバイナンスが独自に開発したバイナンススマートチェーン上でビットコインをペッグして 1 BTC=1 BTCB として取り扱うことができる。本当のビットコインは無くても「ビットコインを持ってますよ」と証明すればいい、という発想。
トランザクショナルトークン
主にトランザクションの問題解決のために考案されたトークン。
xDAIがこれにあたる。ステーブルコインとして登場した DAI にはトランザクションの問題があった。イーサリアムのプラットフォームを使っていて、トランザクション毎の待ち時間が数分とかあった。またコストもトランザクション当たり数千円とか、かかっていた。
だいたいステーブルコインとして US ドルにペッグされて 1 DAI = 1 USD で使っていただけますよ、と言いながらこのトランザクションコストでは不便すぎる。
そこを解消するために登場したのが xDAI。限られたノードが承認作業を行うコンセンサスアルゴリズムを採用して、トランザクションの問題を解決するようにした。各トランザクションは 5 秒以内に処理されるようになり、コストは約$0.000021 USD。これなら普通に USD の代わりとしても使える。
DAI から xDAI への移行はブリッジを使って変換できる。
ユーティリティトークン
サービス対価として利用可能なトークンのこと。Brave ウェブブラウザに組み込まれた Basic Attention Token(BAT)がこれに当たる。
BAT はウェブ上に広告を出したい広告主、ウェブを閲覧するユーザー、コンテンツを作るコンテンツクリエイターの3者の間でやり取りされる。広告主は BAT を払って広告を出稿する。広告を Brave を使って見たユーザは対価として BAT を受け取る。コンテンツでユーザを惹きつけ、ウェブサイト上で広告を表示させたコンテンツクリエイターも BAT を受け取る。
詳しい仕組みはこちらの記事「Brave はただのブラウザではない。それはトークンが作る web3 エコシステム」に書きました。わりとこの仕組み感動します。
セキュリティトークンとの違いは、機能をいろいろ持たせてるかどうか。セキュリティトークンには特別な機能はない。資産を証明することに特化している。
ユーティリティトークンはいろいろ機能や使い方がデザインされている。
ガバナンストークン
トークン保持者が持っている数に応じて、プラットフォーム内での決め事への投票権を付加されたトークン。
Audius の$AUDIO がこれに当たる。Audius はブロックチェーン技術を使った音楽ストリーミングプラットフォーム。ユーザーは無料で音楽を聴くことができて、音楽アーティストは音楽が誰かに聴いてもらえるごとに$ AUDIO というトークンが手に入る。
Audius の詳しい仕組みはこちらの記事「Audius が音楽革命をブロックチェーンで巻き起こす」に書いた。これすごい面白いです。
音楽アーティストやリスナーが集めた$ AUDIO トークンはガバナンストークンになっていて、今後 Audius が重要な決定事項を決める際の投票権になっている。Audius はこれからもまだまだ発展するだろうし、将来の方向性を決めるべきことがたくさんある。そうした際にこのトークンが議決権として使われていて創業者もそのトークンを元にしたコミュニティの一員として参加する仕組みになっている。
NFT
非代替性トークン。デジタル上で唯一の価値を証明するトークン。
もうこれは今さら説明は要らないでしょう。みんなの NFT。誰でも NFT。なんでも NFT。とにかく NFT。
もしご存知でなければ「NFT」でググってください。山ほど出てきます。
これはただの分類
以上の6種類のトークンを紹介したが、それぞれはひとつのカテゴリーに属するわけでもない。プラットフォームトークンであり、かつガバナンストークンでもある、とか。
なのでいちいちこれは何に属するトークンか、などと考えることにはあまり意味はない。
それより自分でトークンを発行するか、トークン買うか、何かをしようと考える際のヒントとして使う感じ。
ERC20 とは
ERC20とはイーサリアム上でトークンを作るための標準規格。
トークンはスマートコントラクトによって定義される。スマートコントラクトはトークンを定義するだけでなく、トランザクションを制御して、それぞれのトークン保持者の状態管理も行う。これはかなり慎重に進めなければならない。
一旦スマートコントラクトがデプロイされたらそれは変更できなくなる。もしトークンがカンタンに盗まれるようなバグがあったりしたら、そのトークンで作ったコミュニティは崩壊してしまって取り返しがつかなくなる。
それぞれのトークンは独自でユニークだし、同じのなんてひとつもない。トークンを入れておくウォレットを提供している会社にとっても、いちいちバラバラの仕様のトークンを全部管理できるようにメンテしてる暇はない。
なので一定の規格として ERC20 が作られた。
ERC20 は Ethereum Requests for Comments の略。 20 はガイドラインが20個あるから。
これに準拠していれば基礎的な部分でのバグは防げてるだろうし、あなたが新しく作ったトークンも Metamask などのウォレットにスグに入れることができる。
トークンは未来を見ている
「トークンなんて面倒くさいことしないでそのままお金を使った方が早いだろ」と思われたかもしれない。しかしそれでは本当のトークンコミュニティの創造にはつながらない。
例えばあなたが素晴らしいプロジェクトを立ち上げてトークンも流通させた。名前はオレのトークンだから「Oreno」。1 Oreno = 1 円で取り引きされているとする。あなたのプロジェクト内であるタスクをこなす毎にユーザーは 10 Oreno が獲得できる仕組み。
こうなるとそこで 10 円を配るのとは意味が違ってくる。
10 円だとそれは 10 円でしかない。「10 円もらったなー」で終わる。
でも 10 Oreno は今日の価値がたまたま 10 円であるだけで、未来にそのプロジェクトが活性化してより人々がその価値を認めたら価値があがって 10 円ではなくなる。
トークンはそうして同じ志を持つ人にこそ価値がある設計になっている。トークンは未来を見ているのだ。
トークンは株とは違う
「わざわざトークンなんて使わなくても株の方が信頼できるでしょ」と考えるかもしれない。が、株ではトークンよるコミュニティは創り出せない。
ニンテンドーの株主は必ずしもニンテンドーのゲームが大好きな人達というわけではない。株主は投資として任天堂株を保有しているケースがほとんどだろう。
トークンは違う。トークンの保有数が多い人はコアなファンなのだ。
Audius に登録した音楽アーティストやリスナーは$AUDIO トークンを持っている。普段からの Audius の使い方に応じた数が配分されるのでコアなファンほどたくさん持っている。単なる株主とは熱量が違う。
「値上がりすればいいなー」だけではなく、そのコニュニティーのコアなファンとして参加して使いながら提言もする。
株ではそこまでのコニュニティ創造は難しい。
トークンはお店のポイントとは違う
「結局それってお店のポイントよね」と思っていたら、それはちょっと違う。
パン屋さんやラーメン屋にもポイントがある。カードにお店のスタンプを押したりして、20 個たまったらどれでもパンひとつ無料でプレゼント、とか。そのお店のファンの人はたくさんポイントを集めるだろう。もっと特典を設計してたくさんポイントが貯まるようにすればトークンと変わらないかもしれない。
ただポイントはポイントでしかない。パン屋の例で言えば「パンと引き換えること」だけが出口になる。
お店の超熱心なファンがめちゃくちゃポイント集めて日本円にして 20 万円分になったとする。しかしその人はきっとこう考える。「なんぼ好きでも 20 万円分のパンって。さすがに飽きるわ」と。
そこをトークンにすればもっと柔軟な使い道が設計できる。
ファンが支えるだけの時代の終わり
今までの発想だとほぼ全ての会社やプロジェクトはファンが支えていた。例えば音楽の場合はまずミュージシャンがいて、そのファンが作品やライブチケットを買うことで、そのミュージシャンを経済的な意味では支えていた。
ファンにとっても好きなミュージシャンの作品を楽しむ対価として払っているのだから、いい取り引きだったとも言える。ただ経済的側面だけを見れば明らかにお金の流れはファン → ミュージシャンの一方通行。ミュージシャンが「ファンのみんなー!ありがとー!」と言っても結局お金的には「また次の新しいのも買ってね」だった。
トークンになればここが変わってくる。ファンはそのコミュニティを支えて発展すればトークン価値が向上してリターンが見込める。こうなってくるとニュージシャンがステージの上から「ファンのみんなー!ありがとー!」と叫ぶテンションも変わってくるんじゃないか、と思う。
これはミュージシャンだけではない。トークンを使うプロジェクト全てに言える。お客さんに「買ってくれ」と営業するだけではなくなる。「内容に共感したら、一緒に盛り上がるようにしましょうよ」と。
イーサリアムの野望
イーサリアムの基本思想として人々のあらゆる取り引き、証券はもちろん、不動産管理から、アート、ゲーム、保険、宝くじにいたるまで全てをイーサリアム上で行う、というのがある。
なんとなく「そうかな」とは思うけど、壮大過ぎてイメージが着いていかない部分があった。
でもトークンの使われ方と事例を見ていくとより具体的にイメージできて「これはありえるな」と。
しかもここに紹介したトークンは 90%以上は当然のようにイーサリアムのプラットフォーム(レイヤー2含む)を使っている。 Ethereum2.0 も出てきてガス代問題も解消されたら、いよいよ野望も現実味をおびてくるだろう。詳細はEthereum2.0 の初心者向け徹底解説書きました。
この未来には楽しいイメージしかないのでこれからも応援したい。
トークンの作成はめちゃカンタン
Ethereum と Solana でトークンを作ってみたが驚くほどカンタンにできた。ここに作り方の解説を載せるためにテストしたのだが、解説はやめた。
単純すぎて言うことがない。もしあなたがトークンを作って何かやってみよう、と考えた際に作成の部分で困ることなんてきっと無い。ツールとか使ってやればいいだけ。
その代わりにものすごく頭を悩ませることがある。それは「どんなトークンをどんな人達に配って、どんな仕組みでどんなコミュニティやプロジェクトを創るのか?」という設計そのものだ。この設計の方がトークン作成の 100 万倍難しいし、じっくり考えなくてはならない。
そのトークン設計においてできるだけ参考になるように、事例を交えてこのブログを書いた。
まとめ
トークンには底知れないパワーが秘められているが、まだ多くの人はそこに気が付いていないように感じている。実際、トークンなんてまだまだ発展途上だし、理想をかかげたものの実現せずに潰されるかもしれない。ICO 詐欺みたいなのはしっかり規制されて退場して欲しいし、正当に明るい未来を描いているトークンにはもっと活躍して欲しい。
もしこれをお読みのあなたも何かの web3 プロジェクトに共感したら、ぜひトークンを使うという形で応援してみてはいかがだろうか?
トークンの未来はそんな人達ひとりひとりにかかっているのだから。トークンはただの傍観者のままではその本質が理解できないだろう。コミュニティに参加して、保持することで誰でもその未来を創るメンバーになれる。そんな世界がもうすぐそこまで来ているのにボケっと見てるだけなんてもったいない。
ぜひあなたにピッタリのトークンを獲得したり、ご自身でトークンを発行してみてください。
これからも暗号通貨とブロックチェーンについていろいろとブログを書くつもりです。ツイッターでも情報発信してます。ぜひフォローしてください。
最近のクリプト情報もいいけど、基礎技術の理解が重要なことに気が付いた。この本読んでベースの技術を勉強したら、わりと分かってきた。おすすめです。