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Ethereum2.0の初心者向け徹底解説
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- ジャバ・ザ・ハットリ
イーサリアム 2.0 はまず全体像を把握していないと、その枝葉だけを拾ってもわけが分からなくなる。これさえ読めばしっかり技術的要件をおさえた上で全体像が理解できるレベルにまで書いた。
ブロックチェーンに興味がある人にとってイーサリアム 2.0 の知識は絶対に欠かせない。なぜならイーサリアム 2.0 はイーサリアムだけでなく、全てのブロックチェーンの未来の方向性を指し示しているから。これからのブロックチェーンがどうなるのか?なんて誰にも分からない。でもイーサリアム 2.0 には確実にそのヒントがある。
もくじ
そもそも Ethereum2.0 って何?
現状のイーサリアムが抱えるスケーラビリティの問題を解決するのが Ethereum2.0。イーサリアムはこれから数年かけて 2.0 へとアップグレードされる。
Ethereum はその人気からネットワークが巨大化してスケーラビリティの問題が山積している。とにかく遅くて、コストがかかり過ぎる。それが Ethereum2.0 にアップグレードされると、ものすごく速くて、低コストのトランザクション処理が可能になる。
ブロックチェーンに必要な大切な3つの要素は「スケーラビリティ」「分散化」「セキュリティ」。現行の Ethereum は「分散化」「セキュリティ」の2つは十分に保たれているが、スケーラビリティがいまいち。
まずコストがかかりすぎる。トランザクションコスト(ガス代)が時には 6000 円とかあって、1000 円を Ethereum で送るのに手数料が 6000 円かかるとか「はぁ?」みたいなことが起こる。他のプラットフォームだと 0.0 ナンボといくつか 0 が繰り返されるようなトランザクションフィーなのに。
さらに遅い。Ethereum が 1 秒間に処理できるトランザクション数は 13。それに対して他のプラットフォームのは以下のようになっている。
プラットフォーム | Transaction per second |
---|---|
Binance Smart Chain | 40 |
Cardano | 266 |
Solana | 50,000 |
ライバルのプラットフォームと比較してもかなり遅い。
Ehtereum2.0 はいつ出てくるの?
まず Eth2 はある日にドンとリリースされるのではない。それぞれのフェーズに分けて段階的にリリースされる。注意が必要なのがとにかく計画がコロコロ変わること。「****年に出します」と言われてもあまり信用してはいけない。だいたい Ethereum2.0 の話は 2016 年からあったのだ。
公式サイトから出ているコメントがこれ。
We're reluctant to talk too much in terms of a technical roadmap because this is software: things can change
あんまりテクニカルロードマップは言いたくない。だってこれソフトウェアだし。変わるよね。いっつも。
今時点でそれぞれのフェーズと計画はこの通り。
フェーズ0
ビーコンチェーン(2020 年リリース済み)
フェーズ1
以前まではシャードチェーンだったけど、マージに移った
フェーズ 1.5
以前まではシャーディングだった。PoW からできるだけ早く PoS に以降するために既存のメインネットをシャードチェーンのひとつにすることに。
フェーズ 2
以前はマージだったけど、、、
もうわけわからん。気にするだけムダ。
とにかく結論としてはとりあえずの計画でしかないし、これからもきっと変わる。
計画は変わるがイーサリアムのコア開発チームが目指していることはそんなに変わらない。リリース時期は「そのうちに」ぐらいで考えて目指す方向をしっかり理解した方がよさそう。
直近の2年以内の計画としては以下の3つが最重要
- ビーコンチェーン
- シャーディング
- マージ
ちなみにこの先 10 年の計画はこれ。
Ethereum と Ethereum 2.0 はどう違うの?
スピードがめちゃ速くなって、コストが激減して、セキュリティ性がめちゃ向上して、なにもかもが変わる。イーサリアムだけじゃなく、イーサリアムの上で成り立っている数々の DeFi エコシステムそのものが変わる。
でもユーザーとして使う立場になるとなにかを変更したり切り替えたりする必要は一切無い。持ってる ETH も NFT もそのまま使える。全てはスムーズにほとんどのユーザーが気が付かないままに 2.0 に移行する。
投資している人にとっての気になる値段には大きな変化がある。上がるか下がるかは分からない。でも、過去のリリース履歴から言って、すごく大きく値段が変わることは確か。
PoW と PoS はどう違うの?
Ethereum2.0 によってコンセンサスアルゴリズムが現行の PoW から PoS へ移行される。
コンセンサスアルゴリズムとはブロックチェーンに正しいトランザクションが書き込まれていることを保証する仕組み。中央にサーバーがあって正しさを管理している訳ではないので、ネットワーク内にあるノードがそれぞれ協力しあって、正常性確認の処理を行う。
ビットコインや Ethereum1.0 などはその仕組みとして PoW(Proof of Work)を採用している。たくさんのコンピュータパワーを必要とする計算を全ノードが行い、一定期間の間に最も速くその確認を終えたノードに報酬が支払われる仕組み。この仕組みだとムダになる電気代が巨大すぎて問題となっていた。
例えて言えば毎回、ノード参加者全員に競争させて1位の人しか報われることがなく、 2 位以下の人達は全てがやり損になってしまっている。
そこを解決する仕組みで登場したのが PoS(Proof of Stake)。PoS の正常性確認ではある一定の基準を満たしたノードだけが参加し、確認しなければならないブロックセットが出るごとに、その確認処理を行うノードの割り当てする。つまり「今回あなたはこのブロックをチェックしてください」と言われることになる。こうすることでコンピュータパワーを使ったのにムダに終わることがなくなり、電気代の問題が解決される。
ビーコンチェーンって何?
PoS の基盤となるチェーン。ビーコンチェーンがあることで PoS のステーキングが可能になる。ビーコンチェーンはあくまで PoS のためのチェーンなので、ビーコンチェーンにスマートコントラクトや ETH の送金処理を行う機能は入っていない。
ステーキングに関するロジックはビーコンチェーンが持っていて、例えば悪意のあるバリデーションノードの検出やそのペナルティ(預けた ETH の没収)などを行う。
ビーコンチェーンは 2020 年の 12 月にリリースされて、それと同時にイーサリアムのステーキングも始まっている。その様子は https://beaconcha.in/ で確認できる。
なので原理的にビーコンチェーンの発動がスグにイーサリアムのスケーラビリティの問題解決につながってはいない。だから「はじまりのはじまり」とも言える。
引用 ethereum.org
シャーディングって何?
イーサリアムのチェーンを分割していくつものシャードチェーンにて効率的に並列処理を行う仕組み。最初はまず 64 チェーンになる予定。これでトランザクション処理の速度が爆上して、コストも驚異的に下がる。ある意味でイーサリアム 2.0 の真骨頂。
ひとつひとつのシャードチェーンはこれまでのイーサリアムのチェーンとほぼ同じ働きをする。各バリデーションノードをどのシャードチェーンに割り当てるのか、はビーコンチェーンによって制御される。
詳しい解説はこちらの「イーサリアム 2.0 のシャードチェーンの解説」に書いた。
マージって何?
チェーンの統合のこと。この段階まで PoS を制御するビーコンチェーンと PoW を制御する Eth1 のチェーンは共存している。このタイミングでそれらのチェーンが統合されて、それをマージと呼んでる。(以前まではドッキングと言ってた)
マージによってイーサリアム上で PoW のマイニングは終わる。Eth1 のメインネットのチェーンはこのタイミングでシャードチェーンのひとつになる。マージによって既存のトランザクションが失われることはなく、全てはスムーズに移行される。
引用 ethereum.org
マージの際の重要な出来事として Triple Halvening がある。これは ETH の発行量が 90%減少されること。ちょうどビットコインの半減期と同じ発想。トリプルと言ってるのは
半分の半分の半分 = 約90%減
だから。
現行の PoW においては ETH の発行量は 1 日にだいたい 13500ETH ぐらい。 詳しくはこちら https://etherscan.io/chart/blockreward これは全ての ETH 供給量の約 4.3%に相当する。
PoS に完全移行したら、供給量が 0.3%から 0.4%の間になる見通し。この辺りについてはビットコインの発行量パーセンテージとの比較による分析記事が多数出ている。
ビットコインの場合、半減期に大きな価格の変動がある。ほとんどのケースでガクっと値段が上がったりしている。イーサリアムの場合は半減ではなく、トリプルになって 90%減のタイミングがマージと共に訪れる。
私は預言者ではないので値段が上がるか下がるかは言えないが、このタイミングで大きな価格変動があることは確実だろう。
もっとも信頼性があって確実にマージの進捗とタイミングを知ることができるのはこちらのThe Merge Mainnet Readiness Checklistになる。
GitHub 上で公開されているこのリストはイーサリアムの開発コアチームが進捗を知らせるためのもの。テストネットで試験をして、マージのための準備が完了したのからチェックが入っていく。まだ未完了の内容と現在までどれぐらいのが完了しているのかが分かる。
マージが起こる直前はこのリストの全てにチェックが入っているだろう。
イーサリアム 2.0 がかかえるリスク
ここまでの解説でイーサリアム 2.0 に明るい未来を感じて、「今スグ ETH 買いたい」なんて思うかもしれない。しかしそこはしっかりリスクも把握しておかなければならない。
まず全体的にイーサリアム 2.0 のリリースは運営しながら行われる。言ってみれば飛行機に乗って上空を飛びながらエンジンを変えるような作業だ。
幸いにして 2020 年に実施されたビーコンチェーンはなんの問題もなくスムーズに実施された。今後も事故の無いリリースを願ってはいるが、その技術的難易度の高さから、必ず無事故でリリースされる、なんて保証は無い。
まとめ
イーサリアム 2.0 の動向を追っていくとその無限の可能性を感じる。イーサリアム・プラットフォームの上で数々の新しい DeFi が生まれてその勢いはとどまることを知らない。そんなイーサリアムをアップグレードしてしまう 2.0 の技術を考えてみると、これからブロックチェーンでどんな画期的なことが起こるのだろうと想像してしまう。
しかしあまり技術的な理解無しに「なんかすごそう」と思うのと、これから実装される技術計画を把握した上で考えるのとでは、かなりの差が出る。このブログ記事ではあちこちの情報を横断的に見て回らなくてもここさえ読めば全体像が把握できるように書いた。いかがでしたでしょうか?ぜひご感想をツイッターでお聞かせください。
これからも暗号通貨とブロックチェーンについていろいろとブログを書くつもりです。ツイッターでも情報発信してます。ぜひフォローしてください。