ジャバ・ザ・ハットリ
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Audiusが音楽革命をブロックチェーンで巻き起こす

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「次の音楽革命はブロックチェーンが連れてくる」なんて聞かされても「は?」と思うかもしれない。実は私もそうだった。でもAudiusをじっくり眺めて Whitepaper も全部読んでAudiusのアプリをずっと使ってて「いよいよ音楽もブロックチェーンで革命が起きるな」と心から実感したので、そのことを書いた。

仮想通貨とかブロックチェーンというと投機的な側面が言及されることがほとんど。それもいいけど本来このテクノロジーは世の中をいい方向に導いてくれるもの。

Audius はまさにそんな例のひとつ。世の中にはブロックチェーンにまつわる素晴らしい企画がたくさんあるし、とにかく面白い。

もくじ

Audius とは

ブロックチェーンを応用した音楽配信サービス。Spotify や Apple Music が数年以内に Audius によってブッ飛ばされてしまうのでは、と感じている。まだ立ち上がったばかりで全世界の音楽ストリーミングの 2%以下しか供給されていない。そんな Audius に対して音楽大手メディアのローリング・ストーン・マガジンが「Spotify キラー」「次世代の音楽ストリーミングの覇者になる」と表現した。

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音楽産業の売上げはアーティストに還元されにくい

Audius のホワイトペーパーに書かれたミッションのひとつとして「音楽をアーティストの元へ取り戻す」がある。この提言には音楽産業の構造的問題がある。

スポーツ産業の全売上げのスポーツ選手に支払われる割合は 55%。スポーツは基本的に選手が居なければ成り立たない。スポーツ中継のサブスクリプションに課金する人も観戦チケットを買う人も基本的には素晴らしい選手のプレーを観たいからお金を払う訳で、これは筋が通っている。

ところが音楽業界においてアーティストに支払われる割合はわずか 12%でしかない。残りの 88%は間でプラットフォームやレコードレーベルがかすめ取ってしまっている。数年前は「インターネットがこの構造を突き崩すか?」と思われたがむしろ逆にアーティスト搾取を加速させることになってしまった。

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Audius が明確に謳っているのは全ての収益の 90%は必ずアーティストに還元されること。これまで幾多の巨大音楽企業がなし得なかったことを Audius ができてしまうのはそれを支えるブロックチェーンがあるからだ。


SoundCloud の失敗を乗り超える

数年前、無名アーティストの素晴らしい音楽をリスナーに届けて、音楽を愛する人達のエコシステムは SoundCloud が担っていた。SoundCloud での活躍を通して無名からグラミー賞を獲得するアーティストまで登場した。ところが SoundCloud が巨大化して収益化の課題が切迫する中で、その理念はみごとに崩れ去った。ビジネス界のルールに振り回された SoundCloud はアーティストもリスナーも失ってしまった。

私は SoundCloud 本社のお膝元であるベルリンに在住しており、まわりの同僚にも元 SoundCloud の幹部やエンジニア達がいて、たまにかつての SoundCloud の話を聞いたりもする。SoundCloud の成し遂げようとした理想と現実のギャップの深さには悲しくなることもある。

Audius の創業者はインタビューで SoundCloud の例を話に出して、あの失敗を乗り超えると宣言している。

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Audius 内の通貨$AUDIO

音楽をアップロードしたアーティストには全て$AUDIO という Audius 内の独自通貨にて支払われる。リスナーが聴くごと、ヒットチャートに掲載されるごとにある決まったルールにて支払われる。例えば各ジャンルのチャート1位のアーティストには 200 $AUDIO (約 4 万円)が入金される、とかユーザーが1回聴くごとに 0.01 $AUDIO(約 2 円)とか。

リスナーが普通に聴く分には全て無料。Spotify や YouTube のように広告が流れて、広告主からの広告費の一部がアーティストに還元なんて仕組みは無い。Audius では独自通貨をコミュニティ内で流通させることで様々な問題を解決している。

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現時点の$AUDIO の価格


エコシステム

$AUDIO という独自通貨が Audius を駆け巡り以下のライフサイクルが完成する。立ち上げ初期は$AUDIO の価値が上がることでコミュニティに関わる人全体の利益になる。ある程度、成熟すればそうした側面は消えて、あくまでコミュニティ内通貨の流通により収益モデルが成り立つ。

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$AUDIO は投票権

$AUDIO はコミュニティ内通貨であるのと同時に投票権にもなっている。つまり Audius の運営において重要事項を決める際の投票権の代わりを果たす。当然、初期の投資ラウンドで巨額の投資を行なった投資家には多額の$AUDIO が配られている。そうなると投資家には大きな権利が発生するが、それもスマートコントラクトによって年と共に希薄化し、いづれはアーティストとリスナーへ投票権が推移するようにプログラムに組み込まれている。


Audius の実績

月間ユニークユーザー数は 2021 年 12 月時点で約 660 万人。ブロックチェーン企画の中でこの数字はトップランクに入る。ゼロからスタートしたプロジェクトがわずか2年とちょっとでこの数字はかなりいいし、今後もますます期待できる。

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大物アーティストの支持

音楽サービスにおいてアーティストの支持は不可欠。特に大物アーティストの参加は欠かせない。Audius には Katy Perry, Nas, Jason Derulo, THE CHAINSMOKERS, deadmau5 といったアーティスト達が投資ラウンドに参加し、かつボードアドバイザーも務めている。


Solana への移行

立ち上げ当初は Ethereum のプラットフォームをベースにして実装されていた Audius はその後、順次プラットフォームを Solana に移行している。NFT などの機能は今では完全に Solana ベースだ。Audius が必要とする機能とユーザー体験に対しては Solana の高速で処理されるトランザクションや格安の手数料はとても親和性が高い。これは個人的にも筋がいい判断だと思っている。Ethereum のトランザクションごとにかかるガス代を Audius のユーザーが負担するとは考えにくい。

実際に Solana への移行を市場が評価して、それに連動して時価総額と $AUDIO の価値も高騰を続けている。

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楽曲データは IPFS へ

アーティストがアップロードした楽曲データは全て IPFS に入っている。これが意味するのは例え Audius のサーバーがブッ飛んだり、永遠にシャットダウンされたりしたとしても、楽曲データはどこかのノードで生き残る。

これまでの音楽ストリーミングでプラットフォームが不釣り合いなほどに巨大なパワーを持っていたのは、楽曲データも配信の仕組みもその全てを中央集権的に把握してしまっていたから。データが分散化されることはそれらを制御する上で大きな意味を持つし、 音楽をアーティストの元へ取り戻す、の思想にぴったりと当てはまる。


TikTok 連携

Audius は 2021 年の 7 月に TikTok とのパートナーシップを結んだ。特にこれを市場が高評価し、一時期 $AUDIO の価格が高騰した。

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既存のプラットフォームとは似て非なるもの

ユーザー側の目線から言えば音楽をストリーミングで聴くアプリ、となって常に Spotify や Apple Music が比較対象になる。しかし仕組みを紐解けば既存のプラットフォームとはまったく異なることが分かる。

仮に Spotify が Audius の成長を見て「彼らに負けないようにうちも 10%しか渡してなかったアーティストへの還元率を引き上げよう」と言ったとしても 10%を 90%にすることは難しい。やれば倒産するだろう。構造的にブロックチェーンを取り入れて、コミュニティ通貨を発行しなければほぼ不可能だからだ。

その意味で Audius にとっての本当のライバルは Spotify でも Apple Music でもなく、この仕組みそのものだと思っている。

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DAO による運営

これまでの巨大音楽プラットフォームとアーティストとの間であった争いは結局、収益のパーセンテージ争いにつきる。最初はいいこと言ってアーティストをプラットフォームに招き入れて、ある程度プラットフォームの影響力が出てきたら再交渉でパーセンテージを下げる。もしくはそうした影響力の完全に外側に居る無名のアーティストは使い捨てにされてきた。

Audius はこの調子でいけばその影響力が Spotify や Apple を追い越すだろう。その時に創業者や管理者の暴走を止める仕組みが DAO による運営になる。

通貨である $AUDIO には投票権が含まれていて、創業者といえども権限はその一部でしかない。

そうした DAO を元にしたスマートコントラクトはその他の一般的な株式会社のように常に「監査しなければ信用が担保されない」といったことがない。

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Audius のリスク

個人的には Audius は単なる優良企業であるだけではなく、未来の音楽業界に無くてはならないものだと思っている。

ただこのブログはあくまで Audius を支える技術と思想の素晴らしさを伝えるだけと思って欲しい。決して $AUDIO への投資を斡旋するものではない。投資するならあくまで自己責任で。

Audius だって他のと同じで完璧ではない。以下に私が思う Audius のリスクを挙げておく。

  • 生き馬の目を抜く音楽業界
  • UX はまだ過渡期
  • 米証券取引委員会(SEC)はまだ$AUDIO を未承認

まず音楽業界はこれまですごいビッグプレイヤーも参入しては惨敗した業界でもある。まだ若い Audius がそこで勝ち残っていける保証はまだない。

また Audius のアプリを使ってみれば他の成熟した音楽ストリーミングサービスと比較すると AI によるレコメンドなどユーザー体験としてまだ改善の余地がある。やはり Spotify などこれまで UX に多額の資金とノウハウをつぎ込んできた先駆者の方が一日の長がある。

最後に$AUDIO がまだ SEC の承認を得ていないこと。これには創業者もインタビューで「いずれは取れるはずだ」と楽観的姿勢を示している。ただ次の一言として SEC よりもアーティストとリスナーに支持される方が先決だ、と。もっともなことではあるが、そうした気質が SEC などのお硬いスーツ族に嫌われるんじゃなか、と余計な心配もしてしまった。

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創業者の2人。


まとめ

ブロックチェーンをめぐる企画は技術と思想がしっかりマッチしていれば本当に素晴らしくなる。Audius はそんな企画のひとつ。Audius が示したのは音楽産業の可能性だけではない。ブロックチェーンをめぐる全ての企画に対して「こんなイケてる使い方もあるんだぜ」と高らかに示している。

一言で言って Audius はカッコいい。

音楽アーティストとリスナーの関係をスマートに解決しつつ、市場にも受け入れられている。見た目は同じ音楽ストリーミングでもまったく新しい価値を創造している。こんな企画を知ってしまえば誰でも応援したくなるだろう。この新しい価値は目を凝らしてじっくり見て、よく考えてみないと気が付きにくい。

ぜひ Audius 使ってみて、次世代ブロックチェーン音楽ストリーミングを感じてみてください。

最近 Web3.0 とブロックチェーンの動向が気になってしょうがないからずっと調べてる。有益な情報はブログとツイッターでどんどん発信するつもりです。ぜひフォローしてください。

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