ジャバ・ザ・ハットリ
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イーロン・マスクが特許をオープンソース化した理由がブっ飛んでてステキだった

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数年前、イーロン・マスク率いるテスラ社がかかえていた電気自動車関連の特許を公開してオープンソース化した。ライバル他社に「この特許技術を使いたければ、どうぞご自由に」と公開してしまったのだ。ジャーナリストや専門家が信じられなくて、いろいろと分析していた。

「あのイーロン・マスクのやることだし信じたらダメだ。絶対テスラに利点があるに違いない。」

「特許がゴミ同然だから公開したのでは?」

「ライバルを出し抜くためにやってるに決まってる」

という感じだった。その後、年数が経ってそうしたテスラだけの利点とか技術的欠陥を見つけた人はいない。結局は「全人類のイノベーションを加速すること」これだけが理由だった。

ちょっとブッ飛んだ発想で理解するには数々のインタビューでイーロン・マスクが語る内容を連続して観ていく必要があった。なのでこの件に関するそれぞれのインタビュー発言を抜粋して意訳した。


イーロン・マスクのインタビューの意訳抜粋

60 minutes のインタビュー

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インタビューワー「自社特許をオープンソース化って?」

イーロン・マスク「ホントだよ。誰かがやってきてテスラよりもいい電気自動車を作るとする。もしそれがいい車だったら、テスラよりもたくさん売れるだろうし、結果的にテスラは倒産するだろうね。それこそが世界にとっていいことだと考えてるんだ。ホントだよ。もちろんテスラはそうならないように努力するけどね。」


Air Warfare Symposium 2020

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イーロン・マスク「テスラの究極のゴールは人類によりクリーンなエネルギー環境を提供すること。そんなテスラが特許を自社ポートフォリオに組み込んでしまうと、同じ志をもった他社の活動を阻害することになるんだ。それはテスラがかかげるミッションと相反するよね。だから特許をオープンソース化したんだ。 どこかで『素晴らしい電気自動車を作りたい!』って考える人達のためにね。」


Energy Meeting Place 2014

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イーロン・マスク「だいたい個人的に特許が嫌いなんだ。最初は技術的な資産が蓄積されて特許を取ることに満足してた。いいことだと思ってたしね。でもだんだん気がついてきたんだ。『これって単に弁護士に宝くじのチケットを買ってあげてるだけじゃね?』って。

例えば Apple とサムスンの特許訴訟でどっちが勝ったのか?あれだけの巨額の訴訟費用と時間をかけて、最後に勝ったのは Apple でもサムスンでもなく、間に立って訴訟を煽った弁護士だけ。Apple とサムスンのスマフォユーザー達は『何やってんの?ハヤく辞めてとっとと自分の仕事に戻れよ』って思ってたよね。

あんなくだらないことにテスラは巻き込まれたくないんだ。だから最初から『やりたければどうぞ』って公開したのさ。」


Code Conference

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イーロン・マスク「全ての特許は競合他社の活動をスローダウンさせる。まるで他の船を沈没させるために水中地雷を自分の船のケツから海に放り込むみたいにね。そんな水中地雷を放り込みたくないんだ。

テクノロジー企業にとっての本当のアドバンテージは『いかにその会社がイノベーションを起こせるか』。それが『いかに同業他社をスローダウンさせたか』なんて競争じゃないんだよ。この世界がそうであってはならないんだ。」


Air Warfare Symposium 2020

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イーロン・マスク「テクノロジー企業にとっての本当の意味での知的財産ってのは特許なんかじゃない。素早くイノベーションを起こせる能力、つまりイノベーション速度なんだ。これ以外にはない。その会社のイノベーション速度が十分に速ければ、同業他社の動きを心配する必要がなくなる。なぜならそんな状況下では同業他社ができることって数年前にイノベーティブな会社がやったことのコピーぐらいだしね。

世界を変えるイノベーティブな会社ってずっとそうやってきたんだ」


Energy Meeting Place 2014

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イーロン・マスク「テスラに関して言えば、他社が電気自動車を作ろうとしてるのを阻害するために特許訴訟を起こしたことなんて今まで1度も無い。我々はそんなことしない。だったら特許を守る必要すら無いよね」

インタビューワ「ええ分かりますよ。その発想を分かった上でそうした戦略にうって出るのはビジネス上のアドバンテージがあるってことですよね?」

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(このインタビューワの「なんかあるよね」の表情がウケる)

イーロン・マスク「いや、無いよ。無いって。アドバンテージなんて無い。あったら僕が教えて欲しいぐらいだよ w ある?どう考えても無いよね?www」

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まとめ

この件に関してイーロン・マスクが言ってることは一貫している。「イノベーションを加速すること」これしかない。素直に心を打たれたし、そんなブっとんだ男の行動に対してついつい疑ってかかってしまう自分の心の狭さも感じた。

テスラ社内でも特許公開のアイデアには猛反対が合ったらしい。そりゃそうだろう。せっかく苦労して技術者達が積み上げてきた技術資産をみすみすトップが「みんなに無料であげるわ」なんて言い出したら、文句のひとつも言いたくなる。しかしこの男はやる。

イーロン・マスクはこれに限らず常にイノベーションの重要性を語っている。例えばテスラやスペース X の主要ポジションへの求職者の就職面談の際にはイーロン・マスク自ら面談にあたり「あなたのキャリアの中で起こしたイノベーションは何でしたか?」と質問するらしい。どんな職種のどんなポジションであってもイノベーションの余地があり、デキる人は常にどんな状況でもやる。キラキラの経歴でも一切イノベーションを起こさなかった人や起こせない人は要らない、という考え。

先日 AI day で行われた自動運転技術のプレゼンで公開された最近技術を観てただただ「すげー!!!」と感心した。そこに出てくる技術トップの人材は当たり前ながら超優秀かつ発想もブっ飛んでいて、いったいどうやってこんな技術精鋭集団を束ねるんだろう、と思っていた。やはりそこはトップ自身が心の底からイノベーションの可能性を信じて突き進むからみんな付いていくんだな、と。

イーロン・マスクの場合、その突き進み方が尋常じゃない。特許の件も含めてそれらはハッキリ言って狂ってる。ただ、それぐらいブっ飛んでるからこそイノベーションが起こせるのだろう。

インタビュー集を観ていると「自分にはどんなイノベーションが起こせるだろうか?」と考えた。きっとあなたもビデオを観れば「これからあなたが起こすイノベーション」を考えると思う。上記の発言は以下の YouTube リンクで全部聴くことができます。オススメです!




今のところイーロン・マスク本人が公認する唯一の伝記。この本わりと感動した。

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