イーロン・マスクのロケット製造5つのステップがサイコーだった


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イーロン・マスクが YouTube チャネルでスペース X のテキサス工場スターベースの中を歩き回りながらロケット製造や電気自動車について説明しているのを観た。ツイートしたこの件。

これがめちゃくちゃに示唆に富んでいて面白かった。この日のイーロン・マスクは饒舌で楽しそうなので、かなり魅入ってしまった。きっと彼はカンファレンスや会議室の中でインタビューを受けるよりも、工場でみんながロケット作ったり作業している場で語った方が情熱を込めていろいろ説明してくれるんだと思う。

この中で製造工程の話があって、これはロケット製造などの特定分野だけでなく、IT やその他の分野にでも当てはまる普遍的な知見だと思ったので意訳してみた。ざっとビデオを観て印象に残った部分だけを意訳した。あくまで大枠で言ってることをまとめただけなので、もし詳細に興味があればぜひビデオを観てイーロン・マスクの話を直接聞いて確認してください。超オススメ。

元ネタはこちら。

ここからイーロン・マスクが話した内容 >>>>

製造工程の重要性

誰もがロケットエンジンのデザインにばかり注目しているし、よく質問されるんだ「どんなロケットエンジンをデザインしたの?」って。でもそこに盲点がある。実は本当に重要なのはロケットエンジンのデザインそのものじゃなくて、その製造工程なんだ。スペース X では製造工程をより良くするためにロケットエンジンのデザインの何倍もの労力を割いている。2倍なんてレベルじゃない。文字通り何万倍もだ。もうほとんど製造工程のためにあるってぐらいだ。

製造工程は1番重要なのに、なぜか最も軽視されてるんだ。

「とってもいい究極のデザインのロケットエンジンを作ったとする。それが完成したら製造工程ってのは、そのいいデザインのエンジンをただそのままコピーすればいいってことだろ。そうすれば同じエンジンが100個完成だ!」

ってこれはまったくの間違い。スペース X の現場に足を踏み入れたら即座に分かるよ。

そうじゃないんだ。そんな発想だから作れなくなるんだ。もっとも注力するべき製造工程に注力しないと成り立たないんだ。

まずロケットエンジンのデザインってのはすでに多くの歴史がある。ロシアから始まってそれこそ100以上のデザインが試されてきて、インターネットにもたくさんの文献がある。もう分かっているんだ。きっとこれから宇宙関係の事業を始める人がいてもロケットエンジンのデザインでつまづくことはまず無いと思う。もちろんスペース X のロケットエンジンはロシアのと違って***(ロケットの専門用語)とか使ってるよ。でもそれらはマイナーバージョンアップと言える。

基本は全部ロシア時代のロケットエンジンで完成されてるんだ。

本当に難しくしているのは結局は製造工程なんだよ。もっと言えばエンジンパワー当たりのコストをどこまで抑えて製造工程にのせるのか、ここがポイントなんだ。

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製造工程を極めるための5つのステップ

ステップ1 要件定義にあるバカさ加減を少なくする

まず要件定義ってのがあって「こういうデザインでこういうのを作ってくれ」って計画なんだけど、それらは必ずバカなんだ。本当に文字通りバカなんだ。誰が作ってもどうやってもまず要件定義ってのはバカなんだ。まずそうやって「バカなんだ」って定義しておかないといけない。

一番危険なのはとびきり賢い人が出してきた要件定義で「あの人が作ったんだから大丈夫でしょ」って考えてしっかり質問しないこと。これが一番危険なんだ。私も含めて誰が要件定義を作ってもバカなんだ。だからとにかくそのバカさ加減を少なくすること。所詮は要件定義ってバカだからゼロにはならないけど、とにかくこのステップ1でバカを少なくすること。

ステップ2 プロセスをできるだけ削る

要件定義が決まったら、プロセスが決まる。そこでできるだけプロセスを削るんだ。もの作りに関わる全ての人のバイアスとして「ひょっとして必要かもしれないから付けておこう」ってのがある。これがいけない。

このステップでそういうのをとにかく削るんだ。

削るって実は難しいからね。かなり意識していないと不必要なものを削ることができなくなる。例えば初めて再利用可能なロケットを作った時(発射台から宇宙に行ったロケットが元いた場所にエンジンを噴射させながら戻ってくる再利用可能ロケットのこと)誰にとっても初めてのことだから、あれこれ言い出すんだ「ひょっとしてあれが必要かも」「これも必要かも」って。

それでスプレッドシートに必要な内容を書き込んで重さを測ったら「そんなモンが宇宙まで飛ぶわけねーだろ」って設計になったりするんだ。

結局スペース X は再利用可能ロケットに成功したよね。結論はそれらのひょっとして必要かもと思ったのが全部要らなかったんだ。ホントに必要なら後から追加すればいいんだし。追加はカンタンで誰でもできる。

でも削ること、減らすこと、これが難しいしこれができないと成功にはたどり着かないんだ。

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ステップ3 最適化

最初のステップ1と2が十分に完了してから最適化をするんだ。この最適化を1と2が終わってないのにしても意味がない。

賢いエンジニア達が共通して犯すミスのひとつは不必要な機能をとても賢く最適化してしまうこと。 どんなに上手く最適化しても、実はその機能自体が要らないってことがよくあるんだ。

ステップ4 高速化

ステップ3まではゆっくりでもいいから確実に進めるべきなんだ。それができたらより速くできる方法をここで模索する。あくまで1から3のステップが完了した後だ。そうでないと自分で自分の墓を掘る作業を高速化することになるしね。

ステップ5 自動化

最後のステップが自動化だ。ロボットなんかを使っていかにオートマチックに完成させるか。いつまでも手作業だとスケールしない。自動化も大切なんだ。

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個人的にはこの5つのステップで何度も何度も間違いをした。その間違いから得た経験を今ここで話してるだけなんだ。間違いって1度や2度じゃない。それこそ「何回も」だ。スペース X だけじゃなく、テスラでも同じ間違いがあった。

例えばテスラでモデル3の電気自動車を作ってた時、車の底にバッテリーパックがあって、それはカーボンファイバーでコーティングされていたんだ。製造工程でそのカーボンファイバーコーティングが問題で、まず自動化をかんばった。ロボットをチューニングして少しづつ自動化を向上させた。その後さらにスピードを上げられないか、といろいろと知恵を絞った。その時にやったのはバッテリーをコーティングする際の持ち上げ方やらを工夫して、最適化もがんばってたんだ。ある程度は成功したのかもしれない。

それで最後に聞いたんだ「ところでこのカーボンファイバーのマットはなんのためにあるんだ?」って。

そしたらバッテリー制御チームが「それはノイズと振動を吸収するためです」って言うんだ。

それでノイズ解析チームに行って同じ質問をしたんだ。そしたら「それは火災防止のためです」って言うんだ。

それで「おいおい、君らなに言ってんだよ」ってなって、 それぞれのチームに集まってもらってしっかり話し合ってテストもしたんだ。ノイズと振動をマイクで拾って録音して、マット有りとマット無しの違いを調べて、火災検査もそれぞれやって。それでなんの違いも無かったんだ。どんなテストをやってもマット有りと無しの違いがひとつも出てこなかったんだ。結果的に「カーボンファイバーのマットなんかいらねーよ!」ってなってね。

そこのカーボンファイバーの製造過程のコストはだいたい 200 万ドルだったね。コーティングのために自動化をがんばって、高速化のアイデアもいろいろ試してやってたのが全部無駄だった。全部だ!

素直に言ってテスラには世界有数の頭のいいエンジニア達が集まってるよ。その賢い人達の知恵を結集して高速化や自動化に邁進して、たったひとつの素朴な疑問「このマットはなんのためにあるの?」という小学生でもできそうな質問を見逃していたんだ。

こういうのはよくあるんだよ。ここで学んだのはこの5つのステップの順序だ。1,2,3,4,5としないといけない。カーボンファイバーの件は大きなミスで5,4,3,2,と後ろからやってしまってた。

手痛い間違いだったけど、多くを学んだよ。

->>>>> イーロン・マスクの話の意訳はここまで。

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まとめ

この他にもロケットの専門用語を使ってビデオの中ではかなり説明している。結局すごい物を作った人の成果を見る機会ってロケットが派手に飛んでいく映像とかになるけど、その裏では不断の試行錯誤の積み重ねがあってのことってのを感じた。

そうでもないとあんなすごいロケット飛ばして、電気自動車作って、なんてできるわけがない。

ビデオ全体を通して感じたのは、ただのオタクが世界一の金持ちになったけど、結局はオタクの延長線上のことをずっと情熱を持って熱く熱くやり続けてるってことだった。ただ淡々と説明しているだけでも、この男からふつふつと溢れ出る情熱にかなり感化された。

レベルは全然違うけど「この人みたいになにか創りたい!」と強く思ってしまった。仮想通貨まわりとか、おかしなコメディ番組にイキナリ出たり変なところもいっぱいあるよ。でもやっぱりイーロン・マスクは面白い!

今のところイーロン・マスク本人が公認する唯一の伝記。この本わりと感動した。

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