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「スティーブ・ジョブズってこんな男だったんだよ!」という証言をYouTubeで集めた
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- ジャバ・ザ・ハットリ
かつてスティーブ・ジョブズと共に働いたことがある人や、深い交友があった人達が語る「スティーブ・ジョブズってこんな男だったんだよ!」という証言を YouTube から集めた。
誰もがスティーブ・ジョブズについてはアップル製品であったり、伝記やスタンフォード大でのスピーチなどで知っていると思う。特に IT エンジニアとっては神格化された存在で彼の打ち立てた数々の偉業をくまなく読み漁った人も多いだろう。そんな方は「ジョブズのことはもうだいたい知ってる」と思っているかもしれない。
photo by Ben Stanfield
そこでちょっと視点を変えて、ジョブズ本人が語った内容ではなく、ジョブズと昔一緒にいた周りの人達の証言を聞いていくとかなり面白い。YouTube で次々にそんな動画ばかりを観ていくと、彼の周りにいた人達それぞれの違ったジョブズ像が見えてくる。今世紀最高の経営者にしてビジョナリーの人物像なんて一筋縄ではいかないのは当たり前だが、それにしても多面的に彼の足取りを観ていくと、いろんな興味深いことに気が付いていく。
なのでいくつかのビデオの一部を意訳した。
ジョン・メイヤー
ミュージシャン。音楽を通してジョブズと深い友人関係を築き、計3回アップルの新製品発表のステージにジョブズと共に立った経歴を持つ。
ジョン・メイヤーの話の一部意訳
スティーブはよく僕の個人的な電話に出て話してくれてね。それはすごい嬉しいことなんだけど、いつも緊張してビビってたよ。 僕が彼に電話するときは毎回、何を言うべきか、本当に言いたいことはなにかってスゲー用意してたんだ。だってあのスティーブ・ジョブズだからさ。 それでがんばってスティーブに電話したら、めちゃくちゃに緊張しまくってる僕にこう言ったんだ。
ジョブズ「なージョン。安心していいよ。大丈夫。オレは何十年もコンピュータ業界ビジネス界でいろんな猛者とやりあって鍛えまくってきたからな。君がどんなしょうもない嘘ついても全部見抜けるんだ」
だいたいな、年の離れた若いミュージシャンがビビりながらもがんばって電話してきてんのに、なにこの一言 www。余計に緊張するわ。
ガイ・カワサキ
1984 年の黎明期のアップルに参画した元アップル・エバンジェリスト。
ガイ・カワサキの話の一部意訳
ある日にスティーブが私のデスクの近くにひとりの男性を横に連れて来てね。挨拶も無しにイキナリこう言ったんだ。
ジョブズ「なあガイ、Knware ってソフトどう思う?」
その時はもう何年かスティーブと働いてたから分かってたんだ、彼は洞察力が鋭くてすごく頭がいいからね。「あのソフトはいいですよー」なんて適当なことを言うと、そこを見抜いて怒り出すんだ。しっかり的確な製品評価を言わないといけない。で、こう言ったんだ。
ガイ「Knware 知ってますよ。あれは完全に2流以下のソフトですね。まずユーザーインターフェイスがしっかり考えられていない。グラフィックも良くない。だから僕があのソフトをインストールした後にどんなことができるのかを把握するまで1週間もかかりましたよ。アップルのマッキントッシュに入れたりしたら、ただ単にマックユーザーを困らせるだけですよ。そもそも API が整理されてないですからね。ただの2流以下のソフトというのが私の評価ですね。」
ジョブズが「的確な評価をありがとう。」って言って振り返って「ところでガイ、紹介するよ。(すぐ側の男性を示し)彼、Knware の CEO。」
ガイ「・・・・・・」
この後、ガイ・カワサキはジョブズのように製品評価はお世辞なんて言ってないでストレートに評価しないと物事が進まないからね、とか言ってた。でもな、この件の Knware の CEO の立場からしたらどうなんだろうね。他人事だから面白いけど。
Randy Adams
元 NeXT エンジニア。NeXT はジョブズがアップルを辞職して起こした会社。Randy の起こした会社を NeXT が買収したことにより、ジョブズと共に働くことになる。
Randy の話の一部意訳
ある日 NeXT のオフィスにビル・ゲイツが NeXT コンピュータのデモを見に来ることになったんだ。その時の NeXT のオフィスは2フロアーでね。当日になって下の階に本当にビル・ゲイツが来たんだ。上の階のスティーブに「来たよ!」って伝えてね。でも降りてこないんだ。それで1時間もビル・ゲイツをそこで待たせてたんだぜ。スティーブは他に特に用事はなくて、いつでも来れるってことをオレは知ってたんだけどね。なんかあの時はビル・ゲイツをわざと待たせてたね。なんでかって?知らないよ。それがスティーブなのさ。
オレ達エンジニアにとってはすげー嬉しかったよ。だってあのビル・ゲイツと一緒に1時間もいろいろ話ができたんだぜ。1時間後にスティーブが何も無かったみたいに現れたよ。
オレもテック業界が長いからね。いろんな IT セレブに会ってきたよ。それこそたくさんのセレブ達にね。でも誰ひとりとしてスティーブ・ジョブズみたいな人は居ないよ。
彼と対面するだろ、すると本当に電流が走ったみたいになるんだ。カリスマだな。
彼とのタフな時間を過ごし終えた人は口を揃えて言うんだ「限界を突破した」って。そうなんだ。スティーブは人が自分で思ってる限界を押し上げてしまうんだ。オレもそのひとりだよ。スティーブによってかつては「できない」と思ってたことを「できること」に変えられた。
前半のビル・ゲイツを待たせる話はなんなのか意味は分からん。当時のマイクロソフトの社長を1時間も待たせてビル・ゲイツも怒らなかったのかな。
Walt Mossberg
ウォール・ストリート・ジャーナルの IT ジャーナリスト。テクノロジーカンファレンス AllThingsD でのジョブズとのやり取りはおなじみ。
ウォルトの話の一部意訳
アップルストアの第一号店がワシントン DC にできた時にアップル社の広報から連絡があったんだ。「プレス向けのお披露目会をするのでぜひ来てください」って。それで断ったんだよ。たくさんのひとだかりの中で疲れそうだし、アップルストアって言ってもただの店舗でしょ、って感じで。
次の日にジョブズ本人から電話がかかってきたんだ。
ジョブズ「なんでアップルストアに来ないんだよ」
ウォルト「いや人が多い場所は苦手なんだ」
ジョブズ「いいから来てくれよ。すごい物を見せてやるから。だいたいあんたの家から30分で来れる距離だろ。オレもアップルストアに居るから必ず来てくれよ!」
っていつもの強引さで言われてしまって結局アップルストアに行ったんだ。そしたらジョブズも居て、予想通りのあの紹介をされたよ。
ジョブズ「見てくれよ、この強化ガラスでできた階段を!美しいだろ」「見てくれよ!このオーク材で作ったテーブルの光沢!」っていつものアレだよ。それで一通りの説明が終わって聞いたんだ
ウォルト「このストアはすごいんだけど、あなたがアップル社の CEO としてそんなに店舗設計に関わってていいのかい?つまり CEO の時間の使い方として正しいのか、どうかってことなんだけど」
ジョブズ「いいに決まってるだろ。なに言ってんだよ」
ウォルト「分かった。まーこの感じのフラグシップショップを5,6店ぐらい作るんなら、、、」
ジョブズ「ちょっと待ってくれ。なにを言ってんだよ。5,6店じゃない。もっとだよ。もっとたくさん作るんだ」
ウォルト「もっと?」
ジョブズ「もっとたくさんだ」
ウォルト「どこに?」
ジョブズ「全世界のあらゆる都市にもっとたくさんだって!」
今となっては、世界中の各都市にアップルストアが広がってるのを見てるから当時の彼のビジョンがそこにあったのが分かる。でもあの時スティーブが私の目を見て「世界中にもっとだ!」って言ってもまったくついていけてなかった。あの日アップルストアに誘いを受けて、スティーブから直に説明を受けていながら本質的には私は理解できていなかったんだ。5店のフラグシップショップと世界展開とではまったく違う。
いつもそうなんだ。スティーブの壮大なビジョンを理解するには頭を研ぎ澄まして、彼に喰らいついていかないとまったく理解できてないってことがよくあるんだ。
確かに天才すぎて発想がぶっ飛んでるし、よく分からなくなって当然だと思う。
エドウィン・キャットマル
コンピュータ科学者で、ピクサー・アニメーション・スタジオの元社長。コンピュータグラフィックス分野における多くの重要な発展に寄与する。
キャットマルの話の一部意訳
スティーブに関する逸話でいろいろと従業員に傲慢な態度で接してたって話があるでしょう。みなさんもひとつやふたつは聞いたことがあると思う。たしかにそうだったかもしれない。でも少なくとも私が知る晩年のスティーブはかつての失敗から多くを学んでいたし、共に働く仲間に対してあれほど心をこめて、親切心を持って接していた CEO を他には知らないよ。
よく偉い CEO が判で押したように言ってるでしょう。「従業員は家族のようなもんだ。企業文化が大切なんだ」って。
スティーブからはそんな話は聞かない。でも彼はハッキリとそれを具現化して形で示したんだ。それはピクサーの本社に現れてるよ。
あの本社社屋にはスティーブの意思とアイデアが詰まっているんだ。いかに従業員同士のコミュニケーションを増やして、クリエイティビティが最大限に発揮できるのか、を突き詰めたアイデアがあの社屋デザインに込められているんだ。
スティーブはあの社屋デザイン案を何個も却下したよ。理由は常に「そのデザインでは社員同士のコラボレーションを阻害する」ってことだった。例えば入り口が複数個あるデザイン案も却下された。おかげで入り口はひとつさ。みんなが同じ入り口からオフィスに入るから自然と誰もがそこで顔を合わせる仕組みなんだ。そこで起きた人の交流はそのまま創造性へとつながっていく。
スティーブはいいアイデアってのは人と人その交流からしか生まれないってのを知ってたのさ。独りよがりの傲慢な奴にはあんな素敵に人に寄り添ったピクサー社屋のデザインはできないよ。
ピクサーの創造性はあの社屋デザインだから出てくるんだ。
ピクサー社屋の名前は「ザ・スティーブ・ジョブズ・ビルディング」ですな。素晴らしい社屋、いつかは行ってみたい。
関連ブログ記事 ピクサーで働く人達を YouTube で観て「仕事はこうでないとあかんな」と思った
アンディー・カニングハム
スティーブ・ジョブズに人生で5回解雇された人
アンディーの話の一部意訳
1回目の解雇が1番衝撃だったね。だってもうこれでスティーブと会うことは一生無いって思ったから。
ある日にスティーブのオフィスに呼ばれて行ったら、部屋に彼と CFO が居て、突然に話し始めてね。
ジョブズ「これまでの君の働きぶりはひどい。まったく満足できない。雇用契約を解除する。それだけだ。じゃあ。」って。
あの時は私もまだ若かったし泣くことはなかったけどかなり動揺してね。でもなんとか言葉を発して
アンディー「アップル社には貸しがあるから、それはしっかり払ってもらわないと」
ジョブズ「払うわけないよ。今、言っただろ。それに値する仕事をしてないって」
それで部屋を出てちょっと考えた後に信頼してるメンターに電話したの。そしたらメンターが「もしスティーブ・ジョブズに支払って欲しいのなら、それに値するものを提供しなきゃ」って
アンディー「そんなのなんにもないわ」
メンター「あるよ」
アンディー「なにが?」
メンター「ビジネスプレスとの関係だよ。」
それでスティーブの部屋にもどって彼は CFO と話の途中だったけど、バンって入っていってね
アンディー「スティーブ、私にお金を支払った方がいいわ」
ジョブズ「払わないって言っただろ。なんでだよ」
アンディー「私は毎週40件以上の電話をビジネスプレス各社にしてるのよ。このコネクションは数年がかりで築いたもの。これをアップルが使うには私を通さないと意味がないよね?言ってみてよ、どこのプレスがいい?すぐ電話してあげるわ。とびきりのいい記事を書かせてみせてあげる」
そしたらジョブズが黙って立って机にある小切手にサインして渡してくれたの。彼は頭の回転が異常に速いから、どんな内容でも決断が即決なのよ。
スティーブはせっかちだし、誰にたいしても躊躇なく怒ってたわ。彼には明確なビジョンがあって、到達するまでのスピードやクオリティに基準を持っていた。その基準に達していない人には容赦ない批判と罵声を浴びせてた。文字通りぶちギレてたしね。
ある一定の周りの人達にとってはいい刺激になって、よりその高い基準に達するように仕向けられてた。
ただ残りの人達にとってはいい刺激どころか、ただ単にプレッシャーに押し潰されていた。幸運にして私は前者のタイプだった。一生涯の財産になったことを感謝してる。あの件も含めて以前の私より遥かに成長してるのを感じることができるから。
この即断即決すごいな。本当にこんな変人が目の前にいたらあまりにも状況展開が速すぎて理解できなさそう。
ラリー・エリソン
オラクルの創業者。スティーブ・ジョブズとは30年以上の友人関係を築く。
ラリー・エリソンの話の一部意訳
スティーブとは30年以上の付き合いだけど彼の口から「金持ちになりたい」とか「有名になりたい」そんな俗っぽい欲望を聞いたことがただの1度も無い。彼にあるのはただただ壮大なビジョンを形にすること、ただそれだけだったよ。
スティーブがピクサーの CEO をしていた頃、彼はトイ・ストーリーを作ってたんだ。彼が何回も何回も家に誘うんだ。それで言ったんだよ
ラリー「スティーブ、本当にもう勘弁してくれ。例のトイ・ストーリーだろ。もう70回以上も見せてもらったよ。昨日にレンダリングの質が4%上がったバージョンを観せてもらったところじゃないか。4%か何%かもう忘れたけどさ。かれこれ70回以上だぜ。いい加減にしてくれよ。もう気が変になりそうだよ。」
ジョブズ「ああ。すまない。そうだな。もう何回もやったしな。分かったよ今日はやめておくよ。安心してくれ。ただな、今回のトイ・ストーリーは影のレンダリングが信じられないぐらいに素晴らしく向上してるんだ!そこだけ観てくれ!」
マジであの時は気が狂いそうだったよ。これは一体なんの拷問だよ、と。
でもそれが彼なんだ。スティーブはあの情熱でそうやって形にして結局は世界で最高の製品を作りだすんだ。
このラリー・エリソンの話はジョブズ話の中でも1番好きな話。ジョブズの果てしない情熱が面白く伝わる。
まとめ
ざっと YouTube でビデオを観ただけでもジョブズのほとばしるような情熱と天才性、奇人ぶりを感じずにはいられない。もし実際に会ったらどんな感じだったんだろう、と想像してしまう。
いろんな人が「あの時スティーブがね、、」と体験談を話すことができるのが羨ましくてしょうがない。ジョブズが他界しても、彼らの心の中ではジョブズの精神が生き続けているのだろう。できることなら私も、万にひとつのチャンスでもあればスティーブ・ジョブズと一緒に働きたかった。どうせスグにぶちギレて 3 秒でクビにされたとしても、ほんの少しでいいから彼の情熱に触れてみたかった。もうそんなことは絶対に叶わないけど、YouTube があれば少しは感じることができる。
スティーブ・ジョブズは永遠のヒーロー。
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