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海外転職で最も効果があるのは実は「紹介」だったりする
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- ジャバ・ザ・ハットリ
勤め先のベルリンの IT スタートアップでは事業拡大に伴って毎月 20 から 30 名ぐらいの新しいメンバーが世界中から入ってきている。その中のかなりのパーセンテージで紹介による入社、つまり従業員の友達や元同僚を介した紹介で入社されるケースが多い。
そして先日、私のかつての同僚も紹介で見事にオファーを獲得されたのでそのことを書く。
その同僚は私がシンガポールのスタートアップで働いていた時の同僚でインド出身の女性プロジェクトマネージャーの S。S はいわゆる火中の栗を拾うタイプの人で燃えに燃えまくったプロジェクトを軟着陸されるところをいつくも見てきた。
そのシンガポールのスタートアップのノリは「行けー!やってまえー!」って感じでエンジニアの私は新しいのが好きだし、できるだけそっちの方に携わるようにしていた。
ただ全部が上手くいくわけでもなく、かならずダメなプロジェクトやポシャってしまう企画がたくさんあって、S はよくそんなプロジェクトの後処理をやっていた。
側で見ていて「S ってよくあんなキツそうなプロジェクトもなんとかするなー。スゲー女だな」と思っていた。そのことを S に話すと「おい、こんなもんイヤに決まってるだろ!」と言いながらもなぜか顔は笑っていた。たぶん困難なことほど燃えるタイプなんだと思う。
そこから私はシンガポールを離れてドイツのベルリンに移住して、また別の IT スタートアップに転職したりして数年が経過した。するとふとかつての同僚 S から連絡が来た。
S 曰く「ベルリンの IT シーンも盛り上がってて良さそうじゃん。仕事の空きあったら教えてよ」と。
それで今の勤め先を紹介したら、S も乗り気だし HR に「すご腕のかつての同僚プロジェクトマネージャーが興味あるそうだからよろしく。ちなみにスキルは私が保証します」と伝えて採用プロセスに乗せてもらった。
私はエンジニアなので直接にその採用プロセスには関わってない。英語圏の会社はどこでもその専門職の人が採用を決断する。エンジニアの採用はエンジニアが、プロジェクトマネージャーの採用はプロジェクトマネージャーがする。S との面談を終えたプロジェクトマネージャー達に感想を聞くと全員が「彼女は Fu**in オーサムだ」と言っていた。
それで先日、見事にオファーが出たので後は S の気持ち次第。とりあえず一連のやり取りで感じたのは海外転職における紹介の強さ。
どんなに面談してもやっぱりホントのところは一緒に働いてみないと分からない。誰もが面談ではちょっと普段よりも良く見せようとしたり、逆に緊張したりして本当のところが分からない部分も出てくる。
かつて一緒に働いてきた仲なら充分に仕事ぶりから性格まで分かる。私は最初から会社の HR に「S は超オススメの人材だ」と言っておいた。HR のメンバーは人材採用のために毎月何千もの履歴書をスクリーニングしている。それでもなかなかこれという人材に出会えるチャンスがない。名門大学出身でも GAFAM 出身でもハズレはある。
その点、紹介は強い。かつて一緒に働いた保証が付いてくるからだ。さらに応募する方もかつての同僚が紹介する会社だし、安心できる。誰も超ブラックで一刻も早く辞めたいようなひどい会社を友達に紹介したりしないからだ。
多国籍で国際的な人材が集まる職場だと同僚も転職したり移住したりして、世界のあちこちに散らばってしまう。でも現代ではネットで繋がってさえいれば連絡には、問題がない。そんなことより、一緒に働いていた一日一日の積み重ねとそこでの仕事の質の方が重要だ。
私は S の上司でも部下でもなかったが、ただ仕事を通してお互いを見ていた。そうした積み重ねの中で国籍も人種も性別も異なる S ではあるが、仕事の上では絶大な信頼があった。
そんな地味な信頼の構築を周りの人達と積み重ねることが案外、海外転職の近道になるんだな、と感じた。
海外転職を狙うのなら「Linkedin を充実させて、GitHub にスターを集めて!」と外部へのアピールを熱心にやる方法ばかりがおすすめされている。そんな外部へのアピール以外でも案外あなたの身の回りに次の転職の種が落ちているのかもしれない。 特に周りに多国籍な同僚がいたら、いつどこに移住してしまうのか分からないし、大切にした方がいい。地球の裏側に行ってもいい思い出はお互いの心の中でずっと生き続ける。それがいつかふとした拍子に繋がることもあったりするから。