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Braveはただのブラウザではない。それはトークンが作るweb3エコシステム
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- ジャバ・ザ・ハットリ
Brave の紹介は必ず「すごく速いウェブブラウザ」「プライバシーを重視したブラウザ」みたいな感じになっている。そのおまけみたいに BAT(Basic Attention Token)の説明が付いてくる。実はそのトークンとトークンによって作られるエコシステムこそが彼らの狙い。BAT でそのエコシステムが回れば、クリエイターとユーザーが広告を使って共に協調しあう素晴らしい社会が生まれる。
今、Brave を使ってる人もまだ使ってない人も BAT というトークンを軸にして考えてみるとまったく新しい web3 のエコシステムが見えてくるはず。
「今後ほぼ全ての企業がトークンを発行してその経済活動を行うだろう」「スターバックスもトヨタもディズニーも街角のパン屋さんもトークンで顧客とつながるようになる」そんな話を聞いても「はぁ?」という感想を持つかもしれない。でも Brave が作り出そうとしているエコシステムを理解すれば、わりと現実味があることが理解できてくる。
もくじ
現状のウェブ広告の問題
ウェブサイト運営に広告は欠かせない。コンテンツを作る人に報酬が渡る仕組み、誰もがネット上で楽しくかつ無料でコンテンツを楽しむ仕組みは広告モデルが支えているからだ。
しかしインターネットとネット広告が発展するに従って、その過剰表示とプライバシーの問題が出てきた。
広告の過剰表示
ネット上のユーザーで好き好んで広告を見たい人は居ない。基本的にはいやいやガマンして見ている。
広告は外部のサーバーを使って管理して配信され、広告用のスクリプトが端末の上で走っている。なのでモバイル端末の場合は広告表示のためのバッテリー消費が全体の 52%にもなる。コンテンツロード時間に占める広告の割合は 28%だ。
ウェブを閲覧しているユーザーの気持ちとしては「もういい加減にしれくれ!」となってきた。
プライバシー問題
あなたも「この広告は私のことをトラックしてるな」と感じたことが何度かあるだろう。
どこかで何気に服の EC サイトで、とある服をちらっと見た。そこまで買う気も無かったので閉じた。でもそんなある日を境に、どこのウェブサイトを開いても、あの時に見た同じ服のメーカーの広告がずーっと出てくる。
まるで「これ買わないの?」「この間、見たでしょ?」「見たよね?買う?」「本当に買わないの?」「いつ買うの?」としつこく言われているように。
Google やフェイスブックなどの巨大テックがあなたのネット上での行動をトラックしているから、それに合わせて広告を出してきてるのだ。
アメリカではあるアプリのメッセンジャー上での会話まで解析して「それに合わせた広告を出している」となって大きな問題になった。
あなたが恋人に「指輪が欲しいな」ってメッセージしただけで、次から次に指輪の広告が出てきたら、さすがにプライバシーもクソも無いな、と感じてしまうだろう。
そうしてネット上の行動がトラックされる理由は広告モデルがそうなっているから。広告主によりよいコンバージョン(ユーザーが商品を買うこと)を届けるためにはしっかりトラックして、ユーザーに合わせた広告を掲載した方がいいからだ。
そんな風潮に真っ向から反対するのが Brave になる。
プライバシーを守るブラウザ Brave
Brave はすごく速いウェブブラウザ。興味ある人はこちらから無料でダンロードできます。
Brave は一切個人情報を抜き出さないし、個人のウェブ上での活動をトラックしない。
Brave には標準で広告をブロックする仕組みが入っている。なので YouTube を観ても広告ビデオが流れないし、どのサイトを見ても広告が見当たらない。
ただ自分でどのぐらいの広告を表示してもいいのか、自分で設定できる。
なぜ広告を見る量を設定できるのか?それは広告を見れば見た分だけ BAT のトークンが獲得できるからだ。
普通にブラウザを使ってるだけで1ヶ月に 500 円とかに相当するトークンが手に入る。「え?いつも通りネットサーフィンしてるだけでなんでお金がもらえるの?」となる。
これのすごいところは誰もが Brave ブラウザを使うだけで仮想通貨の世界に入ってくること。ブラウザに搭載されたウォレットにトークンが溜まるし、知らない間に「アタシって仮想通貨を持ってるのね」となる。
BAT のフロー
BAT は詳細を調べていくとかなりのテクノロジーが入っているので理解が難しい。ここでは本当に分かりやすい部分だけを大枠でフローに示す。
- 広告主は広告を出すために BAT を買って、Brave の広告配信システムに登録する。
- ユーザーは見てもいい広告の量を登録する。
- ユーザーの設定に応じて広告が流れる。
- 流れた広告の量に従ってユーザーが BAT を受けとる。
広告を表示したサイトのコンテンツクリエイター(ユーチューバーなど)もそのコンテンツ上で流れて広告の量と質に従って BAT を受け取る。
ここで受け取る BAT は単純に PV(ページビュー)に従って払われるのではない。名前のベーシックアテンションが示すように、ユーザーの関心度合いに応じて払われる。
つまり広告は見たい人見るべき人にマッチングされるので、広告主にとってはウザがられる広告ではなくなり、コンテンツクリエイターにとっても直接収益が入ることとなる。
ここに登場する3者の間で Win -Win -Win の関係ができあがる。
またユーザーは溜まった BAT を気軽にコンテンツクリエイターに投げ銭できる。例えば「このツイートいいなー」と思ったらツイッター上からツイート主に BAT を投げ銭できる。
BAT のエコシステム
BAT はイーサリアムのプラットフォーム上で展開される ERC20 に準拠したトークン。2017 年に初回だけ実施された ICO(クラウドセール)では開始から1分以内に規定の約 35 億円の金額が集まって一瞬にして終了した。当時は歴史上最高かつ最速の ICO 調達額として話題になっていた。
Brave が狙っているのは広告主、コンテンツクリエイター、ユーザーの3者の誰もがハッピーに過ごせるデジタル空間をトークンで作ること。
BAT を持つ人使う人は Brave のエコシステムを支持している人達になる。彼らが BAT の価値を高めてより流動性を確保すればコミュニティの中をトークンが駆け巡りその価値がさらに高まる。BAT はその計画としていつまでも大量に発行されるのではなくキャップが予め決まっている。インフレを起こして価格が目減りするのではない。決まったキャップに達したら供給が停止されることから、コミュニティが活性化するに従ってずっと BAT の価値が上がる仕組み。
なぜトークンでなければならないのか?
ICO で資金調達をした際にそれだったら株式を発行して資金調達した方がいいのでは?と考えたかもしれない。が、それでは Brave の狙ってることの半分しか機能しない。
トークンを使って資金調達をした際にはその投資家は全員がプレイヤーにもなる。もちろん投資家としてそのガバナンストークンを使って、経営に対して進言したり投票もするが、そのトークンはそのまま広告出稿やクリエイター支援にも使える。
それに引き換え、株式はその機能が限定的だ。だいたい「ブラウザから広告を見るごとに株式をお渡しします」とか「広告を出すにはまず株を購入してその株を支払ってください」なんて原理的に不可能。
トークンの場合はその内容、使い方と配布方法をいくらでもデザインできる。
お金をそのまま流通させたら?
3者はそれぞれトークンの取引をして成り立っているが、そんなことしなくてもそのまま法定通貨の US ドルや日本円がそれぞれの手に渡る仕組みにしてもいいのでは?と考えるかもしれない。
それではお金の流れだけは設計できるが、コミュニティの価値創造には繋がらない。
Brave ユーザーがトークンではなくお金でやり取りするとその現在価値でしか評価できなくなる。例えば広告を1回見たら見たら 5 円です、となったら「そうか。5 円か。」で終わる。
これがトークンになると仮に今のレートで同じ 5 円だったとしてもコミュニティ内のそれぞれのプレイヤーか見ているのは 5 円だけではなくなる。
コミュニティが活性化して Brave の考え方に共感する人達がもっと集まりたくさん BAT が使われることで 5 円だった BAT の価格が上がっていく。
現在の Brave ユーザーは全世界に 3000 万人。月間アクティブユーザー数は 1000 万人。この人達は確実にこの Brave の考え方に共感した人達で、もちろん BAT ホルダーで、なにかの形で BAT を使っている。
Brave が狙っているのはこの価値を共有できる人達とのコミュニティの創造。これはお金ではできない。トークンだからこそ可能なのだ。
まとめ
もしまだ Brave を使っていなければぜひためしにダウンロードして使ってみては?無料で楽しいし、何より新しい世界を感じることができて快感です。
Brave の創業者は以前から Brave の狙いが BAT を使ったコミュニティの創造であることを公言している。でもネット記事にはいつも速いブラウザ、とかブラウザ機能の紹介に始終していて、なんか気の毒に感じていた。
考え方のもっと面白い部分が分かりやすく情報発信されて広まって欲しいな、と。
この記事を書くにあたって BAT のホワイトペーパーはもちろんいろんな資料を読み込んでさらに考えなければならなかった。
MV=PT
なんて言う経済学の公式まで勉強しなければならなかった。大学で経済学を専攻された方なら当たり前の話かもしれないが、私にとってはまったくの門外漢でこの本とか読んで基礎から勉強した。
しかしこれからブロックチェーン技術が変革する世の中でテクノロジーの知識はもちろん、経済学の知識もなくてはならないと感じている。
Brave のブラウザを使った際にその意味として「いいブラウザだなー」とだけ思うのか、さらにその先のトークンが作り出すコミュニティが意識できるのとでは大きな差がある。
ブロックチェーンが作り出すトークンはものすごく奥が深く、ここには書ききれないことがたくさんあったのでまた別の記事にする。
これからも暗号通貨とブロックチェーンについていろいろとブログを書くつもりです。ツイッターでも情報発信してます。ぜひフォローしてください。