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サイバーパンク・エッジランナーズに完全に打ちのめされた
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- ジャバ・ザ・ハットリ
「サイバーパンク・エッジランナーズ」はここ数年に観たアニメの中で間違いなく最高の作品のひとつになった。アニメの中のキャラクターと同じように脳みそがブッ飛ぶほどのカッコよさと疾走感でしびれるアニメだった。ネタバレ無しでブログに感想を書いた。
あらすじ
暴力と退廃と犯罪と電脳に溢れたナイトシティが舞台。ゲーム『サイバーパンク 2077』と世界観を共有している。
ナイトシティの学生デイヴィッドは、母の死により生活基盤を失い、半ば自暴自棄で彼女の遺品の中にあったサイバーウェア「サンデヴィスタン」を身に着ける。サンデヴィスタンは裏ルートで母が手に入れた軍用のサイバーウェア。これを巡って裏仕事を請け負う傭兵たちと関わることとなったデイヴィッドは、生きていくために彼らと共にサイバーパンクとして働く道を選ぶことに。
カッコよさ
まず画面、色使い、デザイン、ファッション、音楽のすべてがカッコいい。きっと 2 分 17 秒のこのトレーラーを観ればスグに全身で感じることができる。正直に言ってこの2分間だけで「これ好きー!」となってしまった。
アニメの中に出てくる街並みを見れば1発でサイバーパンクと分かる。街にはゲロを吐いている人や、浮浪者らしき人が放尿していたり、汚い描写が続くがそれが画面には汚く見えない。むしろゲロを吐いてるからこそ「カッコいい!」と思ってしまう。
数々のオマージュ
数々の名作 SF アニメ、映画へのオマージュを感じることができる。それは
- 攻殻機動隊
- AKIRA
- ブレードランナー
- マトリックス
- 時計じかけのオレンジ
など。ここに挙げた作品群が好きな人ならば確実に「サイバーパンク・エッジランナーズ」にハマってしまうと思う。
主人公に感情移入
ゲームならば自分でプレイするし、ゲームに失敗するのも自分。成功するのも自分、となりプレイヤーはそのキャラクター自身に成り代わった気持ちになる。
しかしアニメはそうではない。いったん再生ボタンを押したらモニターの向こう側で主人公が勝手に動き出す。放っておくと感情移入ができないまま他人事で終わる危険性がある。
おそらくそんな理由もあって、アニメの序盤から主人公のディビッドに感情移入してしまう作りになっている。しばらく観てたら私は完全にディビッドの気持ちに寄り添うようになっていた。
ディビッドに「幸せになって欲しい」と思うのだけど、それがなかなか叶わない。中盤ぐらいになったらこのアニメは確実にフィルム・ノワールの流れに沿ってるのが分かってくる。ギャング映画と同じく、羽振りのいい時を経たら後は破滅に向かっていくのを感じる。分かってはいるけど、途中で観るのをやめられない状態だ。
アニメ史に残るデートシーン
脳に直接電極を挿して仮想的に月の表面に降り立ったように感じて主人公のディビッドとルーシーの2人がデートをする、という象徴的な場面がある。月の表面で2人でジャンプして遊ぶ。月のクレーターのふちに2人で座って、宇宙に浮かぶ丸い地球を眺めて話をする。「こんな VR デートしたら一生の思い出になるわ!」というような素晴らしさだった。
私はそんなに恋愛体質ではないし、世にあるラブストーリーの10本中9本は心に響かない。なんか劇中で男女がえらい盛り上がっていても「はいはい。好き同士ヤったらええやろ」と冷めた目で見てしまうのだ。
しかしこの月面 VR デートを観た時は「ああ、なんて素敵なデートなの。。。」とオッサンのくせに10代の少女のように心が締め付けられてしまった。恥ずかしげもなく言ってしまうともういい年だけど「あんなデートがしたい!!」
そしてこの月面 VR デートは物語全体を通してある象徴として活きてくる。
実はラブストーリー
サイバーパンクの世界では他人はまったく信用できず、少しでも気を抜けばスグに命を取られてしまう。自分の強さしか信用できないし、強くなることを誰もが目指している。
そんな世界だからこそディビッドとルーシー2人の「他人を想う気持ち」がとても、はかなく美しく見える。トレーラーを観ただけの時はそうとは思わなかったが、全てを観た後で分かったのはこれは完全なラブストーリーだった。
映像や音楽がサイコーにカッコよく、世界観が荒々しいサイバーパンクだからこそ成り立つ、とびきりに美しいラブストーリー。
決してハッピーエンドではないし、観終わった後は切ない気持ちにしかならない。だけど観た人の心に「他人より自分を優先することが常識の世界で、他人を想うとはどういうことか」と問いかけてくる。それはとても切ないが心地いい感覚だった。
こんな奇跡的な作品めったに観られません。超おすすめです。