ジャバ・ザ・ハットリ
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スペインの美食の街サン・セバスチャンで街をプロデュースすることのすごさを感じた

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スペインの美食の街サン・セバスチャンで街をプロデュースする手法のすごさを実感した。これからの時代においてコンセプトのある街はより人を引きつけるだろう。お金や経済規模だけで人を集めようとする時代はもう終わったように感じている。これからより重要になるのは「街のコンセプト」かな、と。

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もくじ

ピンチョス

サン・セバスチャンはスペインにあるフランスの国境近くにある美食の街。世界中から美食を求めて多くの人が訪れる街。

ここの名物はピンチョス。一口サイズの美味しい料理だ。

ネットで拾ったピンチョスの説明がこれ。

ピンチョスは、小さく切ったパンに少量の食べ物がのせられた軽食のことである。 パンにのせる食材は何でもよいが、バスク料理でよく用いられる魚(とくにメルルーサ、タラ、アンチョビ、ウナギの稚魚もどき)、トルティージャ、肉詰めピーマン、コロッケなどであることが多い。

ピンチョス - ウィキペディア(Wikipedia)

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ただこれは料理の説明でしかない。これだけを聞いても「あっそう。そういう飯が食えるのね」だろう。

それだけだったら、あんなに多くの人達がサン・セバスティアンに集まる訳がない。サン・セバスティアンの真価はそのピンチョスとそれを出す店のバルを中心としたそこでしかできないユーザー体験にある。


バル巡りのユーザー体験

いろんな種類のピンチョスをそこら中のスペイン風のオシャレなバルが出しているとユーザー体験としてすごいことが起こる。そのフローはこうなる

  1. オシャレなスペインの街に点在するバルと楽しそうな人達を見て歩く
  2. 噂のバルに入ってピンチョスを注文する。
  3. きれいなピンチョスがバーに出てきて、食う
  4. 美味い!
  5. 店を出て次のバルを目指す
  6. 1 に戻って無限ループ

これがとんなに楽しいか。誰もが美味い店の料理を少しずつ何軒も何軒も体験してみたい、と思ったことがないだろうか。

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これを日本の美味いと評判の料理に置き換えてみると分かりやすいと思う。

  • まず有名なラーメン屋に行ってそこの名物ラーメンを小鉢に 1 杯だけ食う。
  • 美味い!
  • すぐに店を出て、また有名な寿司屋で寿司屋を2かんだけ食う。
  • 美味い!
  • 次に有名なステーキ屋に行って一口サイズのステーキをちょっと食う。
  • これも美味い!
  • 次に有名なケーキ屋に行って小さなケーキをちょっとだけ食う。
  • そして次の店へ

ってのをずーっとやり続ける感じだ。これがとにかく楽しい。

食文化の発達したスペインの街では当然ながら料理のクオリティが高い。そこにオシャレな街並みがあればいやでも歩きたくなるし、行く先々に美味い店があれば絶対に中に入る。ただ長居はしない。バーに肘をかけて料理が、出てきたらさっと食って次に、いく。

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街の仕組みで気分がアガる

何度も繰り返していると、この街に訪れる人達みんなが同じような、行動パターンを示しているのが、分かった。だから何度も何度も道で同じ人達とすれ違ってもう顔見知りみたいにもなったりする。そこでよくすれ違ったある UK 人カップルが話しかけてきて「あそこのバルのチーズケーキ食べた?もうすごい美味しいから君らも絶対行くべきだよ!」とか言ってきた。とにかく気分が上がるし。楽しいのだ。

街の仕組みで気分がアガっていく。

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このコンセプトを待ちぐるみで作るのはそう簡単ではないのが分かる。まず「ちょっと食って出て行く」をみんなが共有する文化にしておかなくてはいけない。そこらじゅうにある何軒ものレストランが、足並みをそろえてそういう風にしておかないと、その中の一軒でも「しっかり席に座って晩御飯を召し上がって下さい」ってやるとぶち壊しになる。この街ではたった一軒のレストランの中だけで、しっかり食って満腹になったら面白さがまったく無くなるのだ。さらにクオリティの高い店が徒歩圏内に集結している必要がある。バル巡りは歩いて行ける範囲に集まっているからいいのだ。これでひとつでも電車や車に乗って移動になったら雰囲気が台無しだ。

人気のバルは人だかりができているし、町全体がなんかひとで混雑してる感じだ。それはとてもいい演出になっている。楽しそうに食べている人達は 1 番の広告塔になる。

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そこにしかない体験の価値

そこでしか味わえない体験だからこそ世界中から人が訪れる。しかもネットに置き換えることがほぼ不可能な体験だ。VR やらで街の様子を再現したとしても、あの香りや料理の味、雰囲気はまだまだ再現できない。仮にテクノロジーが進化してできたとしても人が VR に求めるモノではないだろう。そんなことに労力を使うぐらいなら飛行機チケットをとってサンセバスチャンに行った方がてっとり早いし、楽しい。

世界のどこでもいろんな街がいろんな独自コンセプトを打ち出している。フランスのカンヌだったら伝統と国際的な知名度のある映画祭を実施するとか、モナコなら F1 レース。ブラジルのリオならカーニバルとか。

そんな中でもサンセバスチャンが打ち出したコンセプトはどこの街もなかなかマネはできないかつ巨大なコストがかからないという意味でよくできてるなーと感じた。

小さな街だけど、スペインやバルセロナに用事がある人はぜひサンセバスチャンにもよることをおすすめします。


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