ジャバ・ザ・ハットリ
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ベルギーの美しい街のホテルのオーナーから「マスク無しでいてくれると嬉しい」と言われた話

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ベルギーに Brugge という名のとてもとても美しい街があり、そこでご夫婦で経営されている小さなホテルに泊まった時のマスクの話。

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もくじ

天井のない美術館と言われる街 Brugge

ヨーロッパの大都市から離れた場所には美しい街が点在している。そんな中でもベルギーの Brugge は最高峰と言ってもいいぐらいの美しさで、別名が「天井のない美術館」となっているぐらいだ。

つまり街全体が美術館のように芸術的で美しい。これは誇張表現でもなんでもなく、その街に足を踏み入れると本当にそう感じた。

泊まったホテルは元は裁縫の学校だった場所で、オーナーご夫婦がそこを買取り改装して宿泊施設にした場所だった。客室数は8つだけの小さくてとてもかわいいデザインのホテルだった。

ホテルに入るとオーナーご夫婦が中を案内してくれた。元は裁縫学校であったことから、いろいろとユニークな建造物がまだ残っていた。改装当時の写真なんかも見せてもらった。そのご夫婦は人柄がとても優しく話しやすい人だったので、いろいろと話しをした。

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マスク無しでいてくれると嬉しい

街に入った時から誰もマスクをしていなかったので、多分大丈夫だろうと思ってはいたけど念の為にマスクのルールについて「この街ではどこでもマスクはしなくていいんだよね?」と確認してみた。

するとオーナーは「そうよ。マスクのルールは無いし、できればこの街ではマスク無しでいてくれると嬉しい」と言った。

私はオーナーの言う「マスク無しでいてくれると嬉しい」という言葉に興味があって、もう少しその意味を聞いてみた。すると彼女が言った。

「私からマスクをどうこうしろって意味では無いから安心してね。それはあなた達の自由よ。今、言ったのはもしマスクを付けないでいてくれたら『私達は嬉しい』ってこと。 この街は観光の街なの。みんなバケーションを楽しんでいる時に、マスクで素敵な笑顔が見れないと残念に思うし、笑顔を見せてくれると嬉しいの」、と。

そんな短い会話でマスクの話は終わった。私はそこまでマスク論にこだわりがある訳でもなく、元からマスクは好きではないので、その時は「そうか」と感じただけだった。

ところが街を歩いて美しい景色をずっと眺めていると、だんだんとオーナーの言っていた意味が分かってきた。

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人の表情が作り出す街の雰囲気

この街は美しい。そしてそこに集まる人達の姿もまたその美しさを助長している。ほとんど全てのカフェやレストランは外の席を用意している。レストランの外にテーブルと椅子を出しているのだが、基本的に椅子の向きは通り向きだ。ベルギーの夏はカラっとしていてエアコンが無くても日陰は涼しいから外でも快適だ。

つまりみんな通りを歩きながらカフェでくつろぐ人達を見る。もちろんカフェのお客さん達も通りを歩く人達を見る。夏のバーケーション季節であることからみんな表情が穏やかだ。

もしこれが全員がマスクをして表情を隠していたとしたら、この街の魅力はダダ下がりだっただろう。

街の運河ではボートが浮かんでいて、みんな観光遊覧を楽しんでいる。ボートはそんなにデカいサイズでもないしわりと客席は詰まっている。そこでもマスクは無しだ。通りからボートを眺めるのも楽しい。なぜならボートに乗っている人達の楽しそうな表情が見えるからだ。

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楽しそうにしている人を見ていると自然とこちらも楽しくなる。バーケーションをひとりで楽しんでいる、なんて思ったら大間違いだ。それこそ一瞬だけ通りですれ違うだけの通行人も含めて、実は何千人と一緒に楽しんでいるのだ。マスクはそんな機会を奪ってしまう。ホテルのオーナーが言いたかったのはそんなことなのだろう、と街を歩きながら考えた。

街の作りや外観を中世のままに残してかつ美しく保つことはカンタンではない。放置すればすぐに派手なチェーン店の看板が建ったりするだろう。この街ではホテルやレストラン、その他すべての観光産業に関わる人達が総出で労力をかけて街を美しくみんなに親しまれるように保たれている。そのひとつが観光客にもマスク無しで歩いてもらこと、だったのだろう。

マスクのルールなんて科学的証拠とその地域の文化に合ったものでいい。全てがヨーロッパのやり方にアジアが合わせる必要なんてない。ただそんなルールを設定する際に世界の事情をまったく知らないで設定していると発想も社会もどんどん閉鎖的になる。

「マスクをしている人=マナーのいい人」なんてのが全世界の共通認識ではない。世界のどこかの美しい街では「マスクを付けないでいてくれると嬉しい」という発想を街の人々が持っている、と知っておくことは有用だと思ったのでブログに書いた。


  • 写真は全て著者撮影
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