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イノベーションを後押しするのはシリコンバレー的文化で、それはとりあえず「スゲー!」と言っておくこと
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- ジャバ・ザ・ハットリ
個人開発ではあるが、なんとか公開にこぎつけたのはベルリンにあるシリコンバレー的文化があったことは紛れもない事実。そんな経験からアメリカのある特定の都市から革新的な IT 企業が次々に現れる理由にはそういったシリコンバレー的文化が後押ししているんだろうな、と感じた。
個人開発においては開発者のモチベーションだけが鍵になる。納期も約束もなくただその開発者が「やってみるか」と思ってやる開発においてはそのモチベーションだけが原動力になる。そしてそのモチベーションは本当にもろくて崩れやすい。
- こんなの作っても意味ないわ
- これ公開しても誰もアクセスしねーわ
- こんなしょぼいアプリを公開しても恥かくだけだ
といった思いはなんども開発者に押し寄せる。で、そういった思いが間違っていることはあまりなく、ほとんどの場合においてそれは正しい。
それでも何百万とある企画の中から0.0001%のキラっと光る企画で諦めずに改善を続けたモノだけが、脚光を浴びて大成功する。
ヨーロッパの IT スタートアップ聖地と言われるベルリンに身を置いて感じるのは、良くも悪くもシリコンバレー的な考え方がひとりひとりに染み付いているな、ということ。それは端的に言ってしまえば、なにかよー分からん新しい企画や考えに出会った時にとりあえずは「オーサム」「ファンタスティック」「アメージング」などを連発してノリノリのコメントをぶつけておくこと。ぶっちゃけ IT 関連のアイデアはあまり素直に「スゲー」と思えないのが多い。今では成功が確定している企業ですらこんな感じだ。
- ビデオが観れるウェブサイト(YouTube)
- 24時間で消える SNS(スナップチャット)
- 写真がキレイに並ぶ SNS(インスタグラム)
もしこれらのアプリが流行る前にこのアイデアを聞かされたとしても「スゲー!」「オーサム!」「ファンタスティック!!」とその先見性を予感して心の底から絶賛できる自信が私には無い。でもベルリンの IT カルチャーにならって一応はそう言っておくだろう。なにが当たるか分からない時代にとりあえずノッておくのはまーまー大事なのだ。そしてこの「一応はノッておく」というのがこの都市の全ての IT スタートアップに勤める人々の意識にデフォルトで入っているようだ。
言っておくが全てのヨーロッパ人がこんなノリな訳ではないし、アメリカ人にしても全てがヒャッハーな訳がない。その証拠に全米の全ての都市から革新的な IT 企業が出てきる訳でもなく、限られたアメリカの都市が突出しているだけだ。
今回の私の個人開発でなんとかモチベーションを保てた原因は2つ。
公開前:プロトタイプを見せた時の職場の同僚や友人達の大袈裟でノリノリなコメント
公開後:アプリを使っていただいたユーザーからのフィードバック
断言できる。これらが無ければとっくの昔に頓挫していた。やったことがある人なら分かってもらえると思うが、自分が作ったものに対してちょっとコメントもらえるだけで、それがどれほどモチベーション向上になるか。それに「オーサム!」なんて言われてたら、そらやる気も出る。別にやたらと褒める訳でもない。特に技術者とかはノリノリではあるが、ダメ出しも強烈だ。
職場の同僚であるロシア人フロントエンドエンジニアの K は、私が個人開発したプロトタイプにあった React+Redux のソースコードを見て、ボロクソに言ってきやがった。バックエンドばかりやってきた私にとってフロントエンドはまだまだ知識が足りないのは分かっている。「それをそこまでメタクソに言うことは無いだろ」と思ったがそれでも嬉しかった。私の個人開発にそこまで熱を込めてダメ出ししてくれる K の熱意がまた私のやる気に火を付けた。ベルリンを包む空気が新しい企画に対してポジティブなのだ。
都市はそこに住む人達が相互に作用しているのでひとりが「やってみるか」とやる気出してやったことが、他にも波及して、またそれがバイラルになって都市全体に波及していく。そういうエネルギーを IT 都市ベルリンからはハッキリと感じる。
もしこれをお読みの方でご自身の住む都市をシリコンバレーに匹敵するぐらいのイノベーション都市にしたいと思ったら、カンタンにできることがひとつある。それは職場の先輩や上司であまり仲良く話す訳でもないし、ちょっと気を使うような関係の人が居たとして、その先輩が個人的に新しい企画を考案して「こういうの作ってみようかなと思うんだよね」と言った時にこう反応するのだ。
「えー先輩マジですか?それ。マジでー!それスゲーぇええ!!そんなの初めて聞いたわ!マジかよ!お前なー天才だわ!もう鼻血出るわ!てめー今すぐこの会社やめろよ!ヤメてそれやれや!天才のくせに時間ムダにすんなよな、おいボケ!そんな顔してザッカーバーグかと思ったわ、この天才!」
と言う感じでちょっとノリのいいリアクションを取ってみましょう。仮にその先輩のショボ企画がスベっても、そんな先輩の企画を見て触発された人や、そんなあなたの態度に触発された他の人達が「オレもやってみるか」と思ってきっとなにかアクションを起こす。そんな相乗効果は都市全体を包むはず。シリコンバレーなんて魔法の都市でもなんでもなく、結局はそんなひとりひとりの新しい企画に対するノリノリなコメントが大きく影響しているのでは、と思った次第。なので私自身も誰かの作ったモノをネット上でも見かけたらできるだけたくさんコメントするようにしている。