ジャバ・ザ・ハットリ
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国際経験がやたら豊富なITエンジニア達だが反グローバル化に対する感想はそっけないものだった

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現在の勤め先であるベルリンの IT スタートアップの同僚の IT エンジニア達は揃いも揃ってとても国際経験が豊かだ。そんな連中と昨今の反グローバル化に対する意見を聞いても驚くほどにそっけなかったが、自分も似たような意見しか持ってないな、という話。

私の経歴とざっと言ってしまうとこうなる。日本で社畜 → シンガポールに移住して5年ほど IT スタートアップ界隈を回る → ドイツに移住してベルリンの IT スタートアップで働くにいたる。

現在のエンジニアチームのメンバーはイタリア人、ロシア人、ルーマニア人、ポーランド人、スペイン人、インド人、日本人(私)と国籍はそれぞれ。そんなチーム内で前述の私の国際移住してきた都市の数、移動の距離、がこの6人の中で最も経験値が乏しい部類に入ってしまう。つまり他の同僚達は私よりも国際移住経験が豊富だ。例えば同僚ルーマニア人エンジニアの K はルーマニアの片田舎で生まれ → アメリカのフロリダ → 韓国 → ニューヨーク → ドイツのベルリン、という移住歴。インド人エンジニアの Y はインドで生まれ → サンフランシスコ → シンガポール → ベルリンという経歴。

「日本 → シンガポール → ドイツ」という自身の経験に対してまーまー国際経験としては豊富に持っているつもり、だったが、チームメンバーの話を聞くうちに「アタシってまだまだだわ」というか、いたって普通であることが判明した。ベルリンは国際的な街で IT スタートアップはさらに国際的とは聞くが、ベルリンの全ての IT スタートアップがこんな感じかどうかは知らない。ただ転職する際に私ができるだけ多国籍なチームを狙って入社したことや他の同僚もそういう国際性に惹かれて入社してきていること、類は友を呼ぶ現象、などいろいろ理由はあるだろうがとにかくそういう状況だ。

そういう人たちだから移住する際の労働許可や移住許可、ビザに関することに当然のように詳しい。本やウェブで読んだとかの中途半端なレベルではなく実際に移住して得た生の情報だから、やたらと詳しい。ちょっとした会話でも「**の都市の情勢はそうなのか」と、とても参考になる情報が手に入る。

なので昨今に世界中に吹き荒れる反グローバル化の流れに敏感なのかな、と思っていた。

反グローバル化というのはカンタンに言えば「オレ様の取り分は外国人には渡さないぞ」という考え方だ。例えばアメリカ人として生まれたからにはその恩栄を俺たちアメリカ人のものにしよう。外国から安い給与の労働者であれ高い給与の労働者であれ奪われるのはおかしい、と。ここではアメリカ人としたがそこをフランス人やドイツ人と換えても一緒。それに悪いとかいいとかは無い。誰でも同じ立場だったなら、そういう考え方の政党に投票してたかもしれない。

どんな国であれ IT エンジニアとしてそれなりの給料を地元の人を差し置いてもらう立場というのは反グローバル化をかかげる人達の攻撃対象にもなる。現チームの多国籍エンジニアにとって最も気になるトピックでもあるはずだ。

そこで「もうすぐオランダでもドイツでも選挙だよね。反グローバル化の流れはどうなんのかな?」と話題をふってみた。
同僚達の発言
「オレって選挙権無いしなー」
「アメリカの就労ビザ取得はちょっとキビしくなるかもな。しかしあれだぜ、アメリカの人のことは大好きだよ。ノリが最高だよ。フロリダは最高だったよ。ただ飯のまずさは尋常じゃないけどな」
「おいおい、どこに移住しても飯は重要だぞ。どんなに人がよくても飯がまずいと機嫌がわるくなる」
「そういう意味では韓国の飯はヨーロッパと全然違って別世界だったよ。」

という感じで政治やグローバル化の話がいつも脱線してしまう。反グローバル化の話題は何度も出ているが、結論はいつも飯がどうとか、街の女性のルックスがどうとかになる。つまり誰も反グローバル化の流れに真剣にどうこうしようとか思っていない。

同僚のエンジニアが言ってたことが決定的だった

「確かに今は反グローバルをかかげる政治家がちょっと人気を得てるけど、政治家の人気と世の中の動きはまた別。市場のグローバル化の流れが止まる訳ないよ。オレの田舎町でもちょっと頭が冴えてる学生はみんなコーディングとかで自分の技術を磨いてるしな。だからエンジニアとして俺たちがやるべきことって技術を磨くことであって変わらないよね」と。

そうなのだ。自分の技術磨いて英語しゃべって好きな都市に移動して楽しく暮らすこと。ただそれだけ。国際経験がやたら豊富な者同士での会話だからいちいち細かい説明無しに少ない言葉数でも言ってることがすっと共有できる。

どこでも移住しようと思えばできる多国籍エンジニア達にとって政治がどうこうというよりも大事なのは、その国の住環境や飯、どれぐらい充実した人生が過ごせそうかという生活に即した情報の方なのだ。

日本の高架下の居酒屋で「今の反グローバル化の流れはだねー」とどっかの記事で読んだ内容をそのままコピーした講釈をたれているオッサンが居たとする。しかしそんな講釈オッサンのグローバル化に対する生活の影響は多国籍エンジニア達ほどには大きくないはずだ。それでも政治的な講釈をたれるのはだいたい地元に密着したオッサン達で、国際間を飛び回るエンジニア達はそんな話をすっとばしてどこかの国々の飯の比較を真剣に話している。

国際間を自由に移動できる人たちが地元密着な人には無い特別ななにか、例えば莫大な資産とかを持っている訳ではない。ただあるのは英語と技術。このブログの結論はいつもこうなのだが、大事なのは政治家の演説よりもなによりも「英語と技術」。人柄も個性も母国語も髪の色、肌の色、なにもかもが違いそうに見える多国籍エンジニア達の唯一の共通項はいつも「英語と技術」。

国際経験豊富な人たちが気にしているのは政治家の演説ではなく、そんな個人にとっての基本事項でした、という話。

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