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職場の同僚の素晴らしさに後から気付いても、その時にはもう居ないから今を精一杯生きよう、と
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- ジャバ・ザ・ハットリ
過去に共に働いたエンジニアチームで歴代最高のチームというのがあったが、そのチームで働いていた当時はそのことに気付いていなかった。今現在、目の前に居る同僚達も後になってから「歴代最高のチームだったな」なんて懐かしく思うかもしれないし、今を大切にしなければ、という話。
英語圏での転職を頻繁に繰り返したのでそれなりにバラエティーに富んだエンジニアチームで働いてきた。「英語で多国籍なエンジニア集団の中で働いている」と言っても全部が全部、素晴らしいチームな訳がない。今から思い起こしても「あれはダメなチームだったな」というのもある。そんな中で歴代最高のチームというのがあって、現行チームを別にすればシンガポールに在住していた際に勤めていたある IT スタートアップのエンジニアチームだ。主要メンバーは私を含めて5人で、それぞれアメリカ人、ベトナム人、ポーランド人、ブラジル人、日本人(私)の多国籍チームだった。
5人はちょっとずつ専門性が異なっていて、誰かひとりが欠けてもプロジェクトが成り立たないような状態でかつ、それぞれの技術スキルが高く、不思議に調和が取れてプロジェクトはガンガン進んでいた。エンジニアひとりひとりの生活スタイルも国際性に富んでいて、誰もが何カ国も移住してきた経験を持っていた。彼らとのちょっとしたランチでの会話もなにかと刺激的だったのを覚えている。
今でもその会社はシンガポールで存続しているがオフィスに行ったとしても私が経験した素晴らしいチームは跡形も無い。当時のエンジニア5人全員がシンガポールを離れて別の国に移住しており、ひとりはスイスに、ひとりはオーストラリア、ひとりはアメリカ、ひとりはロンドン、そして私は今ベルリンにいる。時々 SNS なんかで「あの時なんかオモロかったな」とメッセージを送るとみんなが「そうだったよね」となる。でももうあの5人が同じ国に住んで、同じ会社で同じプロジェクトで仕事をするなんてことは無い。あの時、奇跡としか言いようのないタイミングで同じ職場に偶然に集まった5人だった。
じゃあ当時はそんな環境に「いいなー。サイコーだなー」と思っていたか、というと決してそんな事なかった。個性派集団であることから「なんでこいつらは言うことを聞かねーんだ」とイラつくことが多々あった。しかもそれは5人全員が他4人に対して思っていたことだった。
英語圏でのエンジニア職は人材流動性が高い。会社もあの手この手でいいエンジニア人材を会社に引き留めようとするが、それでもチャンスや刺激を求めてエンジニアは職場と転々とする傾向がある。いい人材ほど自分が世界市場において「どこ行っても食えるわ」という自信があるので、気の向くままにポンポン居住国も職場も変えてしまう。そういう人材を留まらせる手段はほぼ無い。だからこそ素晴らしいチームメンバーを大切にしなければならない。「こいつスゲー」と思う人と仕事ができたら、そんな人と共に働くことができる環境はあっという間に終わってしまうので今を大切に思った方がいい。
というようなことを考えていたら、私にしても今の職場の多国籍エンジニア達を数年が経過してから「歴代最高のチームだったな」なんて思うかもしれないので大切にしよう、と。
実はこのエントリーは下書きを書いてから、ずっと公開しなかった。書いてることは真実であり、私の意見に違い無いが、説教臭くて、私の嫌いな自己啓発本の香りがしてイヤだったからだ。ところが先日、同僚エンジニアのひとりが会社を去ってしまって、ここに書いた思いが一層強くなったので「やっぱり公開しよ」と思ったのだった。