私と同じ会社ではないが、同じビルの中に入っているスタートアップで働く友人 T の話。T は iOS のエンジニアでマレーシア出身で、ムキムキの肉体で、ジムで鍛えるのが大好きで、何年かイギリスに住んでいて、今はシンガポールに居て、ラグビーが好きで、イスラム教徒（ムスリム）だ。

T と仲良く話ができるようになってようやく彼のイスラム教徒感が掴めてきたので、ここに書く。海外で生活することの大きなメリットのひとつとして、このようなまったくバックグラウンドの異なる人から、様々な話が聞けることだ。こういう話を聞くと「自分がいかに世界のことを知らないか」を知ることができる。

（ここに書いたことは約１６億人居るイスラム教徒のうちの私が知っているたったひとりの意見であり、全てのイスラム教徒がこれに当てはまる訳ではないことはご理解いただきたい）

私：なんでイスラム教徒なの？

T：そりゃあ、お父さんもお母さんもイスラム教徒だし。子供のころから自然とイスラム教がそこにあったからだ。

私：イスラム教原理主義に対してどう思ってるの？

T：まず言っておくけど、オレに言わせれば彼らはイスラム教徒じゃない。日本人のおめーに理解できるように詳しく説明すると何日もかかるから、ここでは簡単に言うと、イスラム教はもっとやさしくて素晴らしい教えなんだよ。

私：なんとなく分かるけど、日本人の多くの人は「イスラム教＝テロ」のイメージ持ってしまっているよ。

T：それはもう悲劇だよね。だいたいオレのような普通のイスラム教徒たちこそ、残念に思っているんだよ。

私：ところで、おめー姉がいるんだろ。

T：おう。姉は今でもマレーシアで暮らしてるな。兄貴はロンドンで暮らしてる。

私：みんなイスラム教徒か？

T：当然だ。

私：その姉は例のほっかむりを頭からかぶっているのか。

（イメージ図　 T の姉ではない)

T：おうかぶってるぜ。当たり前だろ。

私：それさー。イケてるって思う。なんていうか T のカノジョとかもほっかむりをかぶってたのか？それを見て「イケてるなー」とかって思うわけか？

T：オレ今までイスラム教徒のカノジョがいたこと無いわ。今のカノジョは香港人だし。おー日本人の女の子と付き合ったこともあるぜ。だってよ、イスラム教徒の女性には触ってもいけないんだぜ。

私：ちょっと待て。今のカノジョは何教だよ。

T：仏教かな？知らないな。

私：おい。その異教徒だったら、触ってもニャンニャンしても、なにしてもいいって発想なのか？

T：いいだろうよ。なにかたいこと言ってんだよ。男だったら分かるだろ。

私：イスラム教徒ってみんなお前みたいなのかよ。だいたいおめーがお祈りしてるの見たことないぞ。

T：いや、たまにはしてるぞ。モスク（イスラム教の教会）行ったことあるか？あそこはいいぞー。心が落ち着くんだよ。やっぱりイスラム教徒でよかったーってマジで思うしな。こんなオレでも。

私：「こんなオレでも」って言うのは自分なりにも敬虔なイスラム教徒じゃないって自覚があるんだな。

T：確かにお父さんに比べたらオレは敬虔じゃないな。でもこんなオレだって来年はメッカに行く予定立ててんだよ。

私：メッカ？サウジアラビアの？

T：そうさ。今までいったことは１１歳の時に一度だけだな。その時の強烈な印象が残ってるわ。あるイスラムの日に全てのイスラム教徒がメッカに集まるのさ。もうねーこの世とは思えない美しさと厳正さなんだよ。（iPhone の写真を検索して）これこれ。すげーだろ。

私：マジか。確かにすげーな。オレも行ってみたいな

T：ダメダメ。そこに入れるのはイスラム教徒だけだしな。あの場を体験したら、なんで俺たちイスラム教徒がこの宗教に心酔してるか分かると思うよ。あの場所にはまったく違う力が働いているんだよ。

私：家族でもっとも熱心なのはオヤジさんか？

T：そうだな。まーもっともオレの名前は父の名前なんだけどな。

私：名前？

T：そう。子供は生きている間は父の名前が入るんだ。オレの T・モハンマドのモハンマドはお父さんの名前。で、いつかオレが死んだらその部分がお母さんの名前に変わるんだ。

私：マジかよ。日本人は家族で同じラストネーム使って死んでも一緒の名前だわ。モハンマドってモハメッド・アリだな。

T：まーそうだ。でもこの名前いい名前なんだけど、さっき行ったイスラム教徒に対する差別でまーまー苦労することもあるよ。パスポートにばっちり「モハンマド！」って書いてあるしな。９１１の時、就職活動でアメリカに行ってたんだけどいっつも入国審査でモメたしな。モハンマドって名前だけだぜ。それなのに「ちょっとこっち来てくれる」って別室に入れられて。おかしーだろ。

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だいたいこの様な話をずっとしていたのでした。

T から受けた印象でとても敬虔なイスラム教徒ではないことが分かる。それでもイスラム教に対する真摯な姿勢とこの宗教に対する誤解を解きたい気持ちが伝わってきた。このようなごく普通の日常生活を送って普段は Xcode で iOS のコードを書いている、私達と変わらない人がイスラム教徒であったりもする。このような事実は十分にイスラム教に対する誤解を解く一歩になると感じた。私のブログの書き方だけでは１００％彼の思いは表現できていないが、少しでも参考になればと思って書いた)

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